自分で一からつくりあげる。既存モデルに頼らず“AIの中身”を極める技術者のリアル
根本 湖輝
AI
2022年新卒入社
パナソニックオートモーティブシステムズは、社員一人ひとりの成長と自律的なキャリア形成を支援するため、さまざまな人事制度や研修プログラムを整えています。
加えて、各部門でも担当事業や専門性に沿った独自のキャリア支援を行っています。
今回は、2022年新卒入社 根本湖輝さんへのインタビューしました。2022年にパナソニック オートモーティブシステムズ株式会社(以下、PAS)に入社した根本は、学生時代の画像処理やディープラーニングの研究経験を活かし、組込み向けAI技術開発やクラウド連携型AIの開発に携わっています。入社3年目を迎え、活躍の幅を広げる根本が仕事の魅力を語ります。
車載ECUの制約下で挑むAI開発。精度と速度の最適解を求め続ける

──所属部署の概要、担っている役割、チームの雰囲気について教えてください。
私が所属しているのは、車載システムアーキテクチャ開発部 AI技術課です。AI技術課の主な業務は、カーメーカー向けに車載用のAI技術を提供すること。具体的には、車載用ECUに搭載する組込み向けAIの開発を行っており、クルマの中だけで完結するAIの制作や最適化、チューニングなどを担当しています。また、社内外のお客さまからの技術相談を受け、製品の一部分をAIで実現する技術の提供もしています。
現在の最大の課題は、車載用ECUの限られたリソース内でAIの精度と速度のバランスを取ること。いわゆるパソコンで用いるAIは計算能力も高いのですが、車載用AIはその100分の1ほどのスペックになってしまいます。しかもAIだけを動かすわけではないため、精度と速度にはトレードオフの関係が。部署の強みの1つにAIモデルの軽量化があり、各SoC(※)に最適化したモデル変換を行っています。
チームは課長1名を含む8名で構成されています。基本的に在宅勤務が中心ですが、メンバーのコミュニケーション能力が高く、良い雰囲気で仕事ができています。プライベートの話もよくしますし、AIという専門性から、メンバーの趣味も技術寄りの傾向があり、趣味でAIに触れた経験なども共有できる環境です。
──根本さんの担当業務について教えてください。
私自身は組込みAI以外にも、クラウドで動作するAIの開発も担当しています。具体的には運転診断システムの一部である物体検知AIの開発に携わっており、ドライブレコーダーから収集したデータを分析し、運転の危険度評価や周囲確認の状況などを判定しています。
物体検知モデルを活用して歩行者や信号機の検出を行い、運転状況の評価を行うのですが、この業務ではエッジデバイスだけでなく、クラウドやデスクトップ環境での最適化技術も必要となり、AI以外の幅広い知識が求められます。
──お仕事をする上で、気をつけていることや大切にしていることはありますか?
AIの分野は変化が大きいため、常にアンテナを張り、新しい情報のキャッチアップを心がけています。そして、お客さまとのコミュニケーションにおいて気をつけているのは、専門用語を多用しすぎないこと。新しいAI分野は、専門用語が確立していない部分も多いため、技術的な説明をわかりやすく、かみ砕いて伝える必要があります。
また、単にモデルを提供するだけでなく、その背景にある技術や考え方もしっかりと説明するよう心がけています。
※ SoC:System-on-a-chip(システム・オン・ア・チップ)……1つのチップにコンピュータに必要な回路を詰め込んだもの。スマートフォンやゲーム機、オーディオ、自動車などに搭載される
研究室変更がもたらしたAIとの出会い。入社後はゼロからのAI組込みに挑戦

──学生時代に学んだことと、この分野に興味を持ったきっかけを教えてください。
学生時代、最初は光ファイバーの研究をしていたのですが、研究室を変える必要があった際に、ディープラーニングに興味を持ち、画像処理の研究室に入りました。そこで車載カメラ映像を扱う研究を行い、おもしろさを感じました。とくに魅力を感じた点として、新しい技術やソースコードが論文と共に公開され、すぐに試すことができる環境があるということ。
また、自分の趣味として、クルマにドライブレコーダーやLiDAR(3次元センサー)を取り付けて、取得したデータをAIで解析するということもやっていて、実践的なおもしろさも感じていました。
──入社の決め手について教えてください。
就職活動では、ディープラーニングを活かせる仕事を探し、とくに車載カメラ関連の仕事に興味を持ちました。出身地の地域柄もあり、自動車関係が身近な存在であったことと、より幅広い分野でAIを活用できるPASを選択しました。面談では共通の研究背景があることで、仕事のイメージが具体的につきやすく、それが入社の決め手となりました。
──入社後に苦労したのは、どのような部分でしたか?
配属された後、技術的な面で実際にAI組込み作業をするのは初めてだったため、先輩にたくさん聞いて覚えました。そこは本当にゼロからのスタートでしたので、大変でしたね。
もちろん自分で調べた上で、ある程度は選択肢を絞って聞くようにはしていましたが、AI組込みに関してはエキスパートがいる環境なので、皆さん積極的に教えてくれます。新しい領域ゆえに、得意・不得意分野がそれぞれあって。「この人だったら知っているんじゃないか」と聞くと得意分野について教えてくれますし、迷ったらすぐにオンライン電話で聞けて、解決までのスピードがとにかく速いのも特長だと思います。
入社1年目で挑んだ運転行動認識AI。若手でも主体的に挑戦できる環境にやりがい

──入社後、もっとも印象に残っている出来事について教えてください。
入社1年目の年度末に行われた社内の成果報告会で、AIモデルの設計やチューニングを担当しました。具体的には、運転手の行動認識をエッジデバイスで動かすプロジェクトで、電話したり、飲み物を飲んだりといったドライバーの動作をリアルタイムで判断するAIを組込みで作成しました。認識精度に課題もあったものの、さまざまなレビューをもらい学びにつながりました。
また、産総研や大学のスパコンを使用する環境構築も1人で任せてもらい、契約関連の事務手続きも含めて担当しました。スパコンの環境が変わることもあり、作り直す必要がある部分もありましたが、これも貴重な経験となりました。若手でも「やりたい」と言えば任せてもらえる環境だと感じています。
──現在の仕事のどのようなところにやりがいや魅力を感じますか?
現在の仕事の魅力として、さまざまな案件に携わるチャンスをもらえることですね。毎年新しいことに挑戦できる環境です。
また、部署全体として新しい技術を取り入れようという意識が強く、日々いろいろな知識が入ってくる刺激的な職場です。新しいことを習得するのは大変な面もありますが、私自身はそれを楽しめるほうだと思います。部署にも自らキャッチアップするような人がそろっていますし、自分も新しい技術に触れてみたいという意欲が湧き、常に成長できる環境だと感じています。
既存モデルに頼らない、AIの“中身”に本気で関わることができるおもしろさ

──今後どのような存在になっていきたいですか?
AIの知識を蓄えていくことはもちろん必要ですが、AIに特化した人材というよりも、AI含めた周辺技術全般のエキスパートをめざしたいと考えています。具体的には、アプリケーション開発の知識や、スパコンなどの学習環境、パソコンのハードウェアなども含めた幅広い知識を持った技術者になることが目標です。
この分野はさまざまな可能性があり、車載カメラ映像だけでなく、LLMなど多様なAIモデルに取り組める環境があるため、非常におもしろく感じています。
──新しい仲間には、どのような方が向いていると思いますか?
学ぶ意欲のある人であれば活躍できる環境だと考えています。部署内には教えてくれる人が多く、技術面での成長機会が豊富です。ただし、基本的には1人1案件で仕事を進めることが多いですね。
たとえば、ある社員は画像系だけでなく、大規模言語モデル(LLM)(※)にも取り組んでいるなど、新しいことに対する敏感さや吸収力が会社として重視されているように思います。
──当社で働く上でのアドバイスやメッセージをお願いします。
まず職場環境ですが、現在は在宅ワークと出社を柔軟に組み合わせることができます。2カ月に1度だけ出社するという人も。フレックス制度もあり、働き方の自由度が高いところは魅力ですね。
また、組込みAIを扱っている会社は多いですが、PASでは既存のAIモデルをそのまま使用するのではなく、実際のAIの中身に深く関わることができます。デバイスメーカーの要件に合わせてAIを作り込んでいく必要があるため、AIのコアな部分の知識が必要となります。
すでに知見がある人材も多く在籍しており、AIの中身まで本格的に触りたい方にとっては非常に良い環境です。数学が得意でないと少し難しい部分もありますが、自分で最初からモデルを作り、組込み向けに変換して載せるという一連のプロセスを経験できるため、そこにおもしろみを感じる方にはすごく楽しい仕事だと思います。
既存のオープンソースモデルを使うわけではないので、AIやプログラミングの知識も自然と身につきます。他者の製品開発ですと、既存のものを組み合わせて調整する作業が多いですが、ここでは手を動かして作り込むという実感が得られます。学びたいという意欲がある方にとって成長できる風土があるので、興味を持たれた方はぜひ挑戦してみてください。
※ LLM:Language Large Model……大量のデータとディープラーニング(深層学習)技術によって構築された言語モデル。生成AI系サービスの基盤となる技術である
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