Our Impact
障がいを越えて「音のある世界」にチャレンジ
大澤さん インフォテインメントシステムズ事業部
聴覚障がいのある大澤さんから取材前に届いた質問シートへの事前回答は、まさにご自身のプレゼンテーション資料そのものでした。しかも表紙には「お忙しい中、インタビューしていただき、ありがとうございます」の文字。そこに大澤さんの人となりのすべてが表れているようでした。そんなあたたかい人柄と、必ず答えがあると信じ最後までやり遂げる熱量は、大澤さんの大きな強み。自然と周りを引きこんでしまう高い求心力と抜群の存在感につながっています。
失敗を恐れずに最後までやり遂げることの大切さ
現在はカーナビを専門として、ディーラーから送られてきた不具合品の解析・修理を行う部署に所属されているそうですが、自職場への自動検査システム導入にも携わられたとか。
自職場の仕事をなんとか効率化できないかということで、元々工場の量産工程で使っていたプログラムを自職場の仕事の工程にアレンジして自動化を進めました。そのために、独学で各プログラムを学び、生産技術部門からも支援を頂きながら、なんとか自職場の工程への導入を実現することができました。
失敗を恐れることなくチャレンジすることを諦めない姿勢が本当にすばらしいですね。
創業者である松下幸之助の『とにかく、考えてみること、工夫してみること、やってみること。失敗したらやり直せばいい』という言葉があります。いつも必ず答えがあると信じて最後までやり遂げる。これが私のモットーです。自動検査システムのプログラムもトータル6か月かけて完成させました。最後までやり遂げれば、その達成感がモチベーションに変わります。
パナソニックを選んだ理由も、耳が聴こえない、音のないで世界で生きていたからこそ、音のある世界でチャレンジしたかったからだとか。
はい。パナソニックというブランドが大好きで、ここで仕事がしたいという思いが強かったので、1週間の職場実習を受けたときに耳が聴こえない私でも出来るんだということを全力でアピールしました。私は、製品のスピーカーをお腹にあてて、振動の有無のわずかな差異が見極めることが出来るんです。これは私の自慢です。
頼りになる"なんでも屋さん"
大澤さんにとっての「仕事」とは何でしょうか?
周囲の人たちと協力しながら、社会へお役立ちすることです。私は、所属部署の"なんでも屋さん"として、治具の故障や自動検査システムでのエラー、外注会社からの問い合わせなどに対し、迅速な対応を行い、トラブルの最小化を通じて、お役立ちを図っています。
まさに頼れる"なんでも屋さん"ですね。とはいえ、障がいがあることで困ったことや悩んだことはありませんでしたでしょうか?
もちろん、若い時は挫折したりネガティブになったり、いろいろありました。今のようにIT環境が充実していない時代は、なかなか乗り越えられなかった時期もありました。口話が多かったので業務の内容もよく理解できないことが多かったですし、会議に出たこともありませんでした。でも、今は困ったり悩んだりすることはほとんどありません。
コミュニケーションツールが急速に進化していますよね。
チャットを使ったやりとりなら十分意思の疎通はできますし、会議は文字起こしのツールを使えば少しくらい言葉がおかしくてもなんとか理解できます。朝会などは動画・字幕付きなので楽しんでいます。
それでも壁にぶち当たったときは、どうやって乗り越えるのですか?
チャレンジしてみてダメだったら、より良い方法を考えてやってみるようにしています。常に厳しい目で「これでいいのかどうか」を振り返り、改善への取り組みを止めないことはとても大切です。
仕事も山登りも頂上の景色はとても美しい
パナソニック オートモーティブシステムズ㈱が取り組む「多様性」については、どのように捉えていらっしゃいますか?
健聴者の文化と聴覚障がい者の文化を無理にミックスしようとしても、それはうまくいかないと思います。聴覚障がいがありながら、健聴者と同じように仕事をするのは簡単ではありませんし、逆も然りです。そしてそれは、健聴者と聴覚障がい者に限った話ではなく、健聴者同士であってもいろいろな人がいて、みんなそれぞれ個性を持っています。大事なことは、多様性を認め合うということよりも、まずは、それぞれが、それぞれの個性や強みを発揮しながら真摯に仕事に取組み、成果を出すことだと思います。そうすれば自然と周りに仲間の輪が出来て、必要なときに必要な助け船を出してくれたりするものです。
それにしても、大澤さんの中には「甘え」という言葉が一切ありません。いつも、何に対しても手を抜かず、全力で取り組むメンタルはどこから来ているのでしょう?
いえ、「甘え」はありますよ。「はぁ」とため息つくこともあります。実は、メンタルは非常に弱い人間だと思っています。メンタルを鍛えるために、また、定期的に心の洗濯をするために、プライベートでは山を趣味にしています。夏は山登りやクライミング、冬は雪山登りやバックカントリー、スノーボードのインストラクターもしています。仕事の達成感と山登りの達成感は共通するものがあります。頂上の景色はとても美しいのです。
絶対に諦めない姿勢は、山から学んだのですね。これから先の未来には、どんな景色を眺めてみたいですか?
私のスキルを周りの社員に広く伝えつつ、現場から離れたところでもさらに視野を広めていきたいです。今後製品の高度化・複雑化が進んでいくことは明らかですから、サイバーセキュリティへの対応や、完全自動化による生産効率の向上や業務効率の改善などにも取り組んでみたいと考えています。これからも、新しいことにはどんどん挑戦していきたいです。