未来を「動かす」技術をカタチに
──車載充電器開発に挑む若き先駆者の挑戦
高橋 勇人
開発本部 研究・技術開発系
ICT(ソフトウエア・クラウド)
2019年新卒入社
パナソニックオートモーティブシステムズは、社員一人ひとりの成長と自律的なキャリア形成を支援するため、さまざまな人事制度や研修プログラムを整えています。加えて、各部門でも担当事業や専門性に沿った独自のキャリア支援を行っています。
今回は、2019年新卒入社 高橋勇人さんへのインタビューしました。充電器ビジネスユニットでパワーエレクトロニクス制御のソフトウェア設計に携わっています。変革に挑む社風に惹かれ、パナソニック オートモーティブシステムズを選んだと話す高橋。これまでの歩みを振り返りながら、ドラスティックに変化する世界での仕事のおもしろさとやりがいを語ります。
変革への情熱と個性を活かす風土に惹かれパナソニック オートモーティブシステムズへ
幼いころから計算が得意で、パズルや数独に没頭していたと言う高橋。読み通りにピースがはまる瞬間を追求した経験が、後のキャリアを築く礎となりました。
「中学・高校時代にバレーボールに打ち込み、相手の動きを観察し、次の一手を予測して対応することが得意でした。事象を手がかりに解を導き出す習慣が、解析への関心につながったのかもしれません」
得意な領域と将来性を考慮し、高橋が大学で専攻したのは情報工学。しだいに数字や解析にのめり込んでいきました。
「複雑な計算式をコンピュータで解いたり、ゲーム攻略のためのプログラミングを行なったり。さまざまな場面で数値解析を活用していました。大学院時代には、磁性体に巻いたコイルに電気を流すことで発生する磁石特性で動作するスイッチトリラクタンスモータの形状変更が電磁界の挙動にどのような影響を与えるかを、数値解析を用いて研究しました」
高橋とパナソニック オートモーティブシステムズ(以下、PAS)との出会いは、大学院1年生のとき。インターン先を探していたことがきっかけでした。
「EVへの関心からPASの2週間のインターンシップに参加しました。100年に1度と言われる自動車の大変革期を迎え、社員同士が協力し合い、楽しみながら仕事に取り組む、情熱的で活気ある社内の雰囲気に強く惹かれたのを覚えています。
また、インターン生の私の提案に対しても建設的なアドバイスをくれるなど、個人を尊重する風土に惹かれ、そのまま第一志望に。入社を決めるのに迷いはありませんでした」
高橋にとって、入社の決め手となったことがもうひとつありました。インターンシップを通じて出会ったある先輩社員の存在です。
「当時、その先輩は確固たるビジョンを持ってプロジェクトをリードしていて、その仕事ぶりに深く感銘を受けました。現在、私はその方の直属の部下として働いていて、良い影響をたくさん受けています」
高出力車載充電器で高いシェアを獲得。世界をリードするPASの一員としてのやりがい
2019年に新卒入社した高橋が配属されたのは、充電器ビジネスユニット 技術開発部 ソフトウェア開発課 制御係。現在は欧州の自動車メーカー向け電気自動車用車載充電器の設計と開発を担当しています。
「車載充電器は、EVに必ず搭載されるもので、EV充電の消費電力量削減でCO2排出量削減に貢献する重要なシステム。私は、次世代向け車載充電器の要素技術の開発に携わり、モデルベース開発を用いたパワーエレクトロニクスの制御ソフトウェアの設計開発を行っています」
近年、自動車メーカーや新興メーカーからつぎつぎとEVが登場する中で、車載充電器の開発競争も激しくなっています。PASは他社に先駆け、車載用充電器の研究開発に取り組み、とくに高出力領域の車載充電器で高いシェアを獲得。EV先進国がパートナーとして認めています。
「欧米市場では、EVの電池電圧が400V帯から800V帯へと移行しており、800V帯に対応した開発では、ソフトウェアによるデジタル制御の進化で製品コスト/サイズを抑制し、さらに顧客要求変化への迅速な対応が求められています。
また、EVから系統側へと電源を供給したり、キャンプ地などでEVから家電に給電したりといった双方向充電など、EVがお客様に提供する価値を高めることも求められています。そうした製品の進化を想定しながら、制御の検討を進めています」
入社後、約4年にわたって電流や電圧検出値を補正する技術の開発や、海外工場への技術導入に従事した高橋。世界の各地域の気象状況や電力供給の違いを考慮しながらの設計に苦労したと振り返ります。
「生産現場と実際の使用環境が異なるため、生産時に設定される数値基準の許容範囲を調整するのは簡単ではありません。実際に現場に足を運んでチューニングを繰り返し、さまざまな温度や電力条件下で模擬テストを行い、取得したデータを解析しながら、最適化を図ろうと努めました」
そして現在、高橋が所属するソフトウェア開発課は、メンバー14名のうち半数以上が20~30代という若い組織。前向きで生産的な文化が根づくチームの一員として、大切にしていることがあります。
「メンバー一人ひとりが事業部の方針や課としてやるべきことを明確化し、理解した上で積極的に自身の目標を設定しています。日々、大きな目標に着実に近づいている実感があり、やりがいが得られています。
仕事をする上で意識しているのは、目標達成に必要なピースを見つけ出し、足元から確実に積み上げていくこと。壮大な計画の一部を担っていることを自覚し、理想をむやみに追求するのではなく、現時点で自分ができることに集中して取り組むことを心がけています」
苦い経験も成功体験も糧にしながら、一貫して車載充電器開発で築いたキャリア
常に進化を遂げている車載充電器の開発は、前例のない挑戦の連続です。中でもとくに高橋の記憶に残る出来事があります。
「当社が提供している高出力の車載充電器には、9.6kW、11kW、22kWの3つのモデルがあります。このうち22kWの車載充電器の測定精度の向上を図る際に、先行して開発されていた9.6kWと11kW用の技術を適用しようとしたところ、構造の違いからうまくいきませんでした。
問題が明らかになったのは、生産開始からしばらく経ったタイミング。厳しい状況に追い込まれましたが、データ収集とリカバリー策の検討を経て、影響範囲と対策についてお客様に説明したところ、理解いただくことができました。
この苦い経験以降、さらに慎重に検証を行い、固定観念にとらわれずに目の前の課題と対峙する姿勢を強めています」
一方、入社以来ずっと量産開発に携わってきた高橋にとって、大きな成果を実感した経験が入社3年目にありました。
「自身が開発に携わった車載充電器が、初めて自動車に搭載されたのを目の当たりにしました。製品が完成して実際に自動車に搭載され、公道を走行している姿を見た瞬間は、非常に感慨深いものがありました。最近ではモビリティショーにも展示されるなど、お客様が強みとしてアピールしている機能に携われたことをとてもうれしく思っています」
こうした高橋の成長を支えてきたのが、PASの充実した研修プログラム。入社後、配属前の研修期間には約半年かけて業界の構造や開発の基礎を深く学び、現在も必要に応じて自由に学べる環境が整っていると言います。
「研修を通じて車載充電器の品質保証プロセスや安全設計のノウハウを身につけた上で、実業務に臨むことができました。また、最近とくに役に立ったのが、『機能安全』や『サイバーセキュリティの設計プロセス』の研修です。技術的な知識だけでなく、マネジメントスキルを学ぶ研修もあるほか、オンライン研修サービスも活用できるなど、研修プログラムは年々充実しています」
革新を、駆ける。変化する世界に身をおき、未来をつくる技術者をめざして
次世代向け充電器の基礎の制御技術の確立を目標に、モデルベース開発を用いながら今期の取り組みを順調に遂行できたと振り返る高橋。時代の変化に応じて要求事項が増えるにつれて、やりがいも大きくなっていると言います。
「近年、新車リリースに向けたお客様の意欲が高まっており、開発期間が短縮化している傾向にあります。スピーディーに安全なパワエレ制御を確立するのは容易ではありませんが、他社が取り組んでいないことにいち早く挑み、実際の製品設計に適用していけるところに、この仕事の醍醐味があると感じています」
入社してまもなく丸5年。新しい開発プロセスの構築に携わりたいと高橋は意欲を見せます。
「現在、私たちはモデルベース開発を活用して設計の検討を進めています。しかし、設計した制御を実際に搭載して動作を確認すると、予想と実機のあいだに差分が生じることが珍しくありません。これをフィードバックして設計を修正し、また動作確認をして、ということを繰り返しますが、このような差分を排除し、机上のみで製品設計を完結させることができたら、大幅なスピードアップと開発プロセスの効率化に貢献できるでしょう。
モックアップを使わずに製品開発が可能になる、そんな新しい開発プロセスの実現をめざすとともに、品質向上により製品の信頼性をさらに高めることがいまの私の目標です」
自動車業界が大変革期を迎える中、その最前線で活躍する高橋。かつてインターン生として刺激を受けたその場所で、当時抱いていたワクワクする感覚を、いまも変わらず持ち続けています。
「パワエレ制御のソフトウェア設計を担当していますが、業務を通じて自動車業界の変革に貢献している手ごたえがあり、楽しみが尽きません。さらに、つぎつぎと生まれる課題に取り組む中で、自分の強みが増え、研ぎ澄まされていく実感もあります。
新しい挑戦に積極的に取り組む人、学生時代に研究したシミュレーション技術、モデルベース技術やパワエレ制御技術を実際の製品開発で活かしたいと考えている人にとって、PASは理想的な場所だと思います」
ドラスティックに変化する世界に身をおきながら、すぐれた製品をいち早く開発していくために、高橋はこれからも高いモチベーションを持って挑み続けます。
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