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ドライブのすべてを写す ドライブレコーダー開発のこだわり
車内外のさまざまな映像を撮影するドライブレコーダー。普段は目立たないですが事故など一大事に役立ち、今では車になくてはならない製品です。開発の苦労や想いを開発メンバーに聞きました。
パナソニック オートモーティブシステムズ(以下 PAS)のドライブレコーダーの強みはなんでしょうか?
宇田さん(商品企画):さまざまな環境でしっかり撮れるということです。特に夜は映像の差が分かる時間帯ですが、当社では夜間でも撮りたいものが撮影できるか、実車検証を通じてこだわって調整しています。真っ暗な場所はもちろん、対向車の光や光源がたくさんある街中、逆に光源のない暗所の市街地など、さまざまな環境での検証を行っています。複数の他社製品も含めて比較し、企画・技術など開発に関わるメンバーがしっかりと自分たちの目で映像を確認しています。カーナビ連携も当社モデルの大きな強みです。ドライブレコーダーの映像をナビ画面に映し出せるので、大きな画面で映像の確認と操作ができ、見やすく使いやすくなっています。本体、カメラ、画面が一体になっている製品にはない強みです。ドライブレコーダーは非常に競争が熾烈な市場ですが、高付加価値商品でお客様に満足いただけるものを提供できればと考えています。
関さん(設計技術):夜間でも鮮明に撮影するため、明るさの指標であるF値にこだわり、レンズメーカーと協力して開発しています。ドライブレコーダーは車のナンバープレートなど細かい表示が見えるかも非常に重要ですので。さまざまな環境下で認識しやすいよう画質の向上に取り組んでいます。高画質化と録画ファイルの大きさなどコストと仕様のバランスもしっかり考えた上で開発しています。カーメーカー向けの商品では後方検知機能も好評をいただいています。
ドライブレコーダー開発には過去の事故・事件からの影響はありますか?
宇田さん:東名あおり運転事件、常磐道あおり運転事件を契機に、あおり運転に対する社会的な危機意識の高まりから、装着率が向上し、特に後方カメラの需要が急増しました。また、車内トラブルなどが起こった際には車内向けカメラの需要が伸びたりと社会で起こる事件とドライブレコーダー市場とは密接な関係があります。特に後方カメラは事件以来市場に定着し、当社の独自調査によると、現在ドライブレコーダーユーザーの約6割以上が使用しています。後方カメラが急増した際は、「ここまで需要が伸びるのか」ととても驚いたことを覚えています。
メディアやSNSなどドライブレコーダー動画が使われていることによる影響はありますか?
宇田さん:テレビなどのメディアでドライブレコーダーの映像が使われることで「こういう事故があるんだ」と認識されることで安全意識の高まりに寄与しているのではないかと思います。ドライブレコーダーが普及していなかった時代は現場のリアルな映像がありませんでしたので、認知の拡大や臨場感には隔世の感があります。教習など教育面でも非常に有用ではないかと思います。
関さん:メディアで使用されることを意識しているわけではありませんが、連携するナビでの表示画質をVGAからHDに対応して高画質化を実現しています。それまではSDカードにはFHDで録画されているにも関わらず、ナビにはVGA画質で表示されており、ナビでの表示画質に改善の余地がありました。これにより車内での映像確認がとても見やすくなったと思います。
PASだからこそ、できたと感じることはありますか?
宇田さん:新規ビジネス立ち上げはPAS社内だけだと難しい部分もありますが、パナソニックグループ全体で協業することでできることが広がります。これはさまざまな事業を持つパナソニックならではの強みではないでしょうか。また、PASではプロジェクト単位でメンバーが同じ方向を向いて開発を行います。技術や企画だけでなく様々な職能がありますが、大きな課題が出てもプロジェクトメンバーが前向きにとらえ業務を行っています。
関さん:開発にあたっては海外の設計会社や製造委託先との連携も必要になるのですが、PASでは開発を仕組み化しており、メンバーが変わっても同じ効率・品質の設計方法を伝授できるようにしています。工場での製造ノウハウもしっかりと輸出できるようにして、高品質な製品が生産できる体制を構築しています。
ドライブレコーダー開発でやりがいを感じたことを教えてください。
宇田さん:商品を使ったお客様の感動の声を聞いたときはとても嬉しいです。ナビ連携機能や、車のシフトレバーをリバースにいれたらモード起動するリバース後方ビュー機能、ボタン一つで起動してあおり運転を確認できるワンタッチ後方ビュー機能など、当社のドライブレコーダーを付けてもらったことで役立っているという声をユーザー調査、お客様相談室、ネットの書き込みなどから知ることができます。我々はあくまでエンドユーザーのために仕事をしていますので、こういった評価は本当にうれしいです。
関さん:ドライブレコーダーは普段あまりつけていることを意識されない製品です。事故かトラブルが起こったときに、はじめて意識されます。そんな時に当社の高画質なドライブレコーダーがあったから「車のナンバー、信号までしっかり撮れて確認できた」という声を聞き、こだわって開発した甲斐があったと感じます。特にナビ連携機能は録画をナビの大画面でその場で細かい部分まで見ることができ、事故の初期確認でかなり有効活用いただいているようです。
ドライブレコーダー開発で苦労したことはありますか?
宇田さん:損害保険会社向けモデルで通信機能のあるドライブレコーダーを開発した際の仕様決めには本当に苦労しました。それまでは物の価値主体の価値検討でしたが、BtoBのお客様がサービス提供者としてどういったサービスを提供したいのか、当社がどうお役立ちできるかを熟慮し、要件定義を行いました。その結果、高く評価されるものになりました。
関さん:通信機能のあるドライブレコーダーを開発した際には、小さな筐体にLTE、Wi-Fi、Bluetooth、GNSS、LCDなどの多数のデバイスが搭載されました。ドライブレコーダーのサイズによってアンテナの大きさが決まってしまいますが、サイズはできるだけ小さくしたいという条件のなかでアンテナの性能を確保する必要がありました。ノイズによるアンテナへの影響をできるだけ小さくすることも含め、どういう構造で適切なサイズに収めるかの検討に一番苦労しました。またカーメーカー向けの製品の後方接近検知機能では、速度、天候、車種、周囲の状況などいろいろな状況で実車検証を行い苦労して開発しました。製品には非常に満足いただいたので努力の甲斐がありました。
ドライブレコーダーは将来どのようになっていくのでしょうか。展望や想いを教えてください。
宇田さん:車以外への搭載も視野にモノ+サービスの価値創出を検討しています。また、CASE※といった概念が浸透・加速するなかで既販車への価値提供も注力ポイントです。今後環境が変わってくる中で、ドライブレコーダーを中心としたサービスも更に広がると考えています。
- CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語
関さん:ドライブレコーダーは映像を残すことが本質なので映像にはこだわり続けていきたいです。画質の優劣で事件の方向性が変わったりもしますので、映像がぶれやすい高速道路、真っ暗闇、不審者感知が必要になる駐車中などどのような環境でも良い画質で取れるよう設計技術開発を続けていきます。