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当社CTO 水山が「オートモーティブワールド2025」 基調講演に登壇。SDV化の鍵は「ソフトウェアファースト」と語る。

2025年1月22日、東京ビッグサイトで開催された「第18回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-」の基調講演に、当社 副社長執行役員CTO水山 正重が、日産自動車(株) フェロー 佐々木 徹夫氏、デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 周 磊氏と共に登壇。自動車のSDV(Software Defined Vehicle)化には、開発手法を「ソフトウェアファースト」へと変革することが重要だと語りました。本講演には、600名以上の参加者が出席しました。

冒頭、「SDVとは?」というトークテーマに対し、水山は、2000年代に「Software Defined化」した携帯電話の事例を紹介しました。「スマートフォンに移行した際、端末ハードメーカーは、既存技術や既得権益を重視し、製品開発において、アーキテクチャの刷新やエコシステム(*1)の形成といった抜本的な変革に踏み出せなかった。結果、オープンなプラットフォームを活用したディスラプターが絶大なパワーを獲得した」と過去の反省を語りました。
- エコシステム:同じ分野の企業の製品同士が連携する。あるいは異業種の企業が、それぞれの技術やノウハウを共有しながら、収益を上げる構造。業界全体の発展には健全なエコシステムを形成することが重要。
自動車業界において、ソフトウェアを高速に進化させる能力を持つ者が決定的な競争優位を獲得すること、SDVはゲームチェンジャーであること、SDVにおいて①ソフトウェア資産の進化・アップデート能力、②開発スピードの抜本的改革、③健全なエコシステムの形成の3つの変革が重要であること、そのためには開発の在り方を「ソフトウェアファースト」へと変革する必要があります。

さらに水山は、「ソフトウェアファースト」の開発実現に向けた、当社の取り組みを紹介しました。
- クラウド開発環境「仮想ハードウェアプラットフォーム」を確立。ハードウェアとソフトウェアを分離することで、ハードウェアがない段階からコンカレント(同時並行的に)にソフトウェアを開発可能。
- 「仮想ハードウェアプラットフォーム」に「VirtIO(バート アイ・オー) (*2)」を適用。戦略的にオープンソース化することで、業界標準化をリード。
- *2 Virtio:仮想化環境で効率的に入出力(I/O)操作を行うための準仮想化フレームワーク。
ディスカッションの中で水山は「ソフトウェアで車の価値を大きく創っていくためには、ハードウェアの世代を超えてソフトウェアを継続進化できるようにしなければならない。例えば、複数の自動車のラインナップがあったとしても、同じソフトウェアを適用でき、ソフトウェアのアップデートが同じようにできる必要がある。常に時代に沿った自由な選択ができるよう、ハードウェアとソフトウェアを分離できるアーキテクチャが必要。当社はVirtIOを拡張し、ハードウェアファーストの開発からソフトウェアファーストの開発に転換できるよう業界をリードしてきた」と語りました。
また、ディスプレイシステム全体をひとつの仮想化スクリーンとして制御する自社技術「Unified HMI」も紹介しました。車両には、インフォテイメントやメーターのような様々なアプリケーションのエンジン制御ユニット(ECU)が各ディスプレイに情報を表示していますが、「Unified HMI」は、その複数のディスプレイを1枚の仮想スクリーンとして制御することで、ディスプレイやレイアウトを自由に検討でき、ユーザーエクスペリエンスの開発をアジャイルに進めることができます。水山は、「Unified HMI」のような技術によって、アジャイル開発をより短いサイクルで回せる仕組みづくりが重要になってくると述べました。
また、参加者から「SDV化において、企業独自のOSを展開するという考え方と、オープンソース等を使い共通プラットフォームを活用するという考え方の2つがある。自動車のUXを最大限発揮するには、どちらが良いか」という質問が寄せられ、水山は「自動車業界では機能領域ごとに、エコシステムの性格が異なるOSを使って、それぞれのエコシステムを構築していく必要があると考えられる。そのため、OSの下位にあるVirtIOがエコシステム健全化のキーとなる。また、SDV化において、オープンソースを使わない選択肢はない。自らの戦略実現のために、OSS(オープンソースソフトウェア)開発を主体的に仕掛けて、関連プレイヤーを巻き込み、業界標準化してくことは重要。健全なエコシステム構築を業界で一丸となって進めていきたい」と意気込みを語りました。
最後にモデレーターの周氏から、次世代の皆さんへ向けたメッセージを求められ、水山は「Be Aggressive!携帯電話業界では、変化が起こっていることが分かっていても、同じ開発手法を継続し、壊滅的な状態に陥った。SDVとAIによって大きな変曲点を迎えている自動車業界では、今まで取り組まなかったことに取り組まないと破滅するというぐらいの危機感をもってAggressiveに踏み出していただきたい」と変革への熱意を込めた言葉を贈りました。
参加者からは、「Be Aggressive!が心に響いた。Aggressiveに行動していきたい」「携帯電話事業の衰退事例を聞いて、危機感を感じた」などの感想が寄せられました。