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3Dグラフィックス技術と顧客を巻き込んだ組織力で新たな体験価値を提供

  • イノベーション

フルディスプレイメーターの技術開発

パナソニック オートモーティブシステムズが扱う製品は、自動車内に使用される車載カメラなどの小さな部品からミラーなどの基幹部品まであらゆる部分で活躍しています。 しかし、これらの製品は一朝一夕に生み出されるものではありません。一つの製品に多くの人や組織が関わり、毎日試行錯誤しながら、昨日よりも今日、今日よりも明日とより良い製品を生み出すために取り組んでいます。
フルディスプレイメーターも、その一つ。今回、カーメーカーにて初めての採用・搭載となる製品で、開発チームを中心に、ゼロからの設計を行い、開発本部など様々な組織のサポートを得て、一つの製品が生み出されています。我々が生み出す製品は車載部品の一つであり、それのみで機能するわけではありませんが、安全・安心を第一とするクルマで、さらなる快適な移動を実現するため、製品価値の追求を行っている様子を紹介します。

既成概念を捨てて、パナソニックにしかできない提案とは

クルマのドライバー席にある前方の速度や警告表示を行うコックピットは、安全・安心に運転を行うためには最も重要な車室内エリアとなります。その中で特に重要な車両状態を可視化する、高精細・高解像度を有したフルディスプレイメーターは、この度、マツダが自信を持って提供する「CX-60」に搭載され、ドライバーの「走る歓び」にさらなる付加価値を与える要素の一つとなっています。

マツダとフルディスプレイメーターの開発をスタートさせたのは、2016年。既存の製品や取り組みに捉われず、新たなコックピットソリューションを提案するため、これまで手掛けていなかったディスプレイメーターを我々の技術力で提案が出来ないか検討を始めました。これまでは、速度表示やタコメーターの表示は、機械式の針で物理的に表示するのが当たり前、この分野においては、過去から商品実績のある他社が圧倒的に先行していました。同じ土俵で製品を出すにはあまりにも無謀、もっと違うアプローチでカーメーカーへの提案が出来ないか、開発チームの検討は続きました。

当時よりマツダがこだわっていたのは、洗練された表現とかっこよさ。メーターとしての速度や警告表示などの車両状態をドライバーに伝えるという絶対的な条件はもちろんクリアしながら、他の車にはないかっこよさを世の中に提供する。このマツダが持つこだわりをカーユーザーにいかに伝えるためのサポートを、当社はいかにできるのか。さらには、ドライバーに分かりやすく表示しながら、クルマで走る歓びを味わってもらうためにパナソニックにしか出来ないことは何か?
連日連夜にわたって、社内およびマツダと打合せを行い、開発チームは、これまでメンバーが培ったゲームグラフィックスのノウハウや車載組み込み技術の知見を活かしながら、3Dグラフィックス技術に一つの解を見出します。

機械式の針メーターで速度表示を行っていた際には出来ない、ディスプレイ全体を使ったアニメーション遷移やユーザーの好みにあわせたモードチョイスで運転時のワクワクや高揚感を醸成すること、そしてそれを3Dグラフィックスで表現することで、新たな価値を訴求していくことがユーザーからも認めてもらえるのではないかとの仮説に至ります。

その仮説を基に、開発チームはマツダとの技術交流でフルディスプレイメーターの試作品も見せながら、地道に提案活動を継続。その結果、周辺車両やレーンの表示を含め、3Dグラフィックスで鮮明に表示できる技術力などが評価され、2020年には当社のメーターを採用頂けることとなりました。

動画①(オープニング)

動画①(オープニング)
エンジンONで車が走り出すアニメーションを演出、シームレスに3眼表示へ移行

お客様と一体となって、改善に改善を重ねる

しかし、ここから具体的な商品設計に入っていくと、大きな壁が立ちはだかります。警告表示として重要なハザード表示。一般的な自動車は、サイドミラー下部のランプとテイルランプとの完全同期による点滅が必要不可欠な仕様となります。さらにフルディスプレイメーター上に配置されているハザード表示も同期させないといけません。表示の加飾により、CPU負荷率が上がり、点滅表示にずれが発生するという事象が起こりました。マツダの要求する仕様でコンテンツを構成すると、どうしてもクリアすることができません。そこでまずは、データの更新回数やデータ量をなるべく減らせるよう、アーキテクチャ改善検討を再三にわたって行いました。一方マツダとは3Dや2Dの表現を調整しながら、CPU負荷率とバランスを取った、グラフィックス表示の調整を行い、マツダにも満足いただける機能性を維持できるようにしました。 この作業と同時に、調整の度に出てくるソフトバグの改修と性能の改善を行うためには、改修ポイント発見→ソフト改修→顧客との相互チェック、このサイクルを出来る限り早く行わなければ、車両の発売には間に合いません。
「今思えば、このサイクルを回していた時が一番の仕事のピークになっていたと思います。」と開発責任者の塚田さんと開発リーダーの高田さん。

開発責任者の塚田さん(右)と開発リーダーの高田さん(左)
開発責任者の塚田さん(右)と開発リーダーの高田さん(左)

ここは、組織の力で難局を突破していきます。開発チームは横浜、マツダは広島と距離が離れていますが、オンライン打合せでは微妙なニュアンスが伝わりにくいことにより、コミュニケーションが上手くいかず、課題やリスクが埋もれてしまいがちです。そこで広島の営業とも連携し、顧客と密接にやり取りができるよう、リーダーの高田さんを中心とした専任チームを広島に構えて、修正が必要な部分を即日横浜の開発チームでソフトアップデートし、広島の専任チームと共有、少なくとも翌日には修正案を面着でマツダに提示するというサイクルを回すことで、マツダの要求に応えていく改善を徹底しました。
また、これまで製品実績のないものであったため、安全設計に必要な法規順守や万が一の故障発生時の振る舞い定義の明確化などの知見について、開発本部と連携し、保安部品商材となるフルディスプレイメーターの安全設計基準をクリアできる仕様を追究しました。

動画②(車両走行時)

動画②(車両走行時)
走行時、光彩の帯を放ちながら液晶ならではの加速を演出

さらなるコックピットソリューションの提案へ

2022年9月15日に日本向け「CX-60」の販売開始がリリースされ、マツダカーユーザーからも好評を博しているとの声が届いています。
「今回の開発は、パナソニックでなければ成り立たなかった、とお褒めの言葉を頂いています。」と塚田さん。
「これまで当社はディスプレイメーターの製品実績はなく、本当の意味でゼロからの製品開発となり、マツダ様と一緒に製品の細かな部分を作りこんでいきました。さらなる差別化に向けて、カーメーカーと一緒に、ユーザーが運転することにワクワクできる価値提供を行っていきたい。」

塚田さん

関連リンク

マツダ株式会社ウェブサイトはこちらhttps://www.mazda.co.jp/cars/cx-60/

開発者の声

高田さん

HMIシステムズ事業部 ディスプレイビジネスユニット
第四商品部 商品開発三課

高田 泰宏さん

今回は私たちの技術をマツダ様にも認めてもらい、共創活動という形で"一緒"に作り上げてきました。どうしたらよいものが作れるかを一緒に考えてモノづくりができたことで、両社の思いが具現化され、良いものができたのではないかと思っています。
今後は、私たちのグラフィックス技術により、"わくわく"する表現を作り出すことで、これからのフルディスプレイメーターとしての新しい価値を生み出し、メーター事業の拡大に貢献したいと考えています。

動画③(モード切替)

動画③(モード切替)
表示モード切替時、左右リングをダイナミックなアニメーションで演出、同時に車の動きにも注目

動画④(運転支援システム情報画面)

動画④(運転支援システム情報画面)
周辺車両やレーン情報を奥行き感のある3Dグラフィックスで表現、リアルタイムで情報更新することで安全安心に運転を支援

動画⑤(キャプションで全モードを説明)

動画⑤(キャプションで全モードを説明)
エンジンスタートからオフまで、一連の動作をキャプションで説明