優れた技能が工場のDXを加速する~敦賀工場
敦賀工場
開発と製造、スタッフが一か所に集結して取り組む敦賀工場。ベテランから若手に、優れたモノづくりの技術が伝承されています。
敦賀工場は福井県のJR敦賀駅から西へ車で15分ほどの距離にあります。操業開始は1974年で、コンビネーションスイッチ、ステアリングスイッチ、インパネスイッチといった車載スイッチ類や舵角センサーやバックアンドコーナーセンサーなどのセンサー群、近年ではヘッドアップディスプレイなどを生産しています。また、グローバルのカイゼンをリードする工場として、タイ、メキシコ、中国、のグローバルモノづくりをけん引しています。
その強みは、開発と製造、スタッフが一か所に集結して取り組むチームワークです。カーメーカーが、仕様や機能、コスト、生産数量、デザインといった製品に対する要求項目を当社の設計部門に示すRFQのタイミングで、製造部門も生産方式の検討をスタートします。商品開発と設備開発、製造プロセスを担う社員は、常に一致協力し、お客様の期待に応える改善提案を重ねます。車載品質に徹底してこだわる風土は、このようにして育まれてきました。
製造現場では、最新のデジタル技術を取り入れ、360度カメラで撮影した動画をAIで解析することで現場のムダと滞留を可視化し、個々の提案やアイデアで日々の改善に取り組んでいます。 2018年度からは、トヨタ生産方式(TPS)によるモノづくり現場の改善に取り組み、現在は、TPSとDX(デジタル・トランスフォーメーション)を掛け合わせた活動で、さらに生産現場が進化。パナソニックグループでも最先端のモノづくりを実践する現場となっています。
こうした最先端のモノづくりを実践する上で、鍵となるのは製造現場をリードする技能者の育成です。当社では、モノづくりに携わる人材の能力向上と育成を目的とした、「モノづくり競技大会」を毎年開催しています。今年度も社内予選を勝ち残った選手たちが、10月に開催されるパナソニックグループの全社大会に挑戦します。
拠点の枠を超えて後輩技能者の育成に奮闘する指導者と、その期待に応える若手技能者の思いを伝えます。
森下照彦さん(写真右):1983年入社。生産ラインのトラブル対応や修理に必要なスペアパーツの管理など、設備保全と管理を担当。パナソニックグループの技能検定一級保有者であり、競技大会の運営を担う委員として活動。そのスキルの高さが求められ、自部門のみならず、他職場からの指導要請にも応じている。
水口幸恵さん(写真左):2022年入社。バックアンドコーナーセンサーの生産技術部門で、現場の生産状況やデータを見える化し、生産性の向上に取り組んでいる。競技大会では、部品の加工・組立・配線を行い、時間内の作業完了と仕上がりの精度を競う「機械複合」に挑戦中。
Q 森下さんはどんな指導者ですか?
水口:森下さんのご指導がなければ、「機械複合」競技のAランクに挑戦できていなかったと思います。どうすればいいのか、壁に直面して相談すると、森下さんは一緒に試行錯誤しくださって、私のやりやすい方法を一緒に考えてくださいます。森下さんの的確なアドバイスで、自分でも少しずつできるようになってきたと感じています。
森下:特殊なやり方ではなく、モノづくりにおける仕事の基本を教えているだけです。自分がやって見せて、本人にやらせて、それがやりにくかったら自分に合うように改善しよう、という流れです。十数年前から新入社員に指導してきました。
普段は柔和なまなざしが、厳しい指導者の目に変わる。
Q 森下さんは組織の枠を超えて、技能者の指導・育成に取り組んでおられますね。
森下:私は来年で定年を迎えます。一人でも多くの技能者を育てたいと考えて、組織にこだわらず、教えてほしいという方には指導しています。指導する上で心がけているのは、全員が同じレベルになることです。それが生産現場全体の底上げにつながるからです。
自分が若手の頃は技能の指導者がいなくて、先輩のやり方を見よう見まねでやるしかありませんでした。指導者なしで、自力で技能のレベルを上げることは、とても難しいです。他の拠点に教えを乞い、技能競技大会で他拠点や海外拠点の選手のやり方を真似るなどして、学び続けてきました。今も、常に学び続け、新しい工法で現場の課題に臨みたいと考えています。
Q 今後の抱負を聞かせてください。
水口:私は今年で3年目になりました。業務でも自分が主となって動くことが増えていくと感じています。森下さんからご指導いただくのは機械複合競技への対策ですが、業務に活用できることがたくさんあります。教えていただいた技術やノウハウをどんどん自分のものにして、成長したいと思います。
森下:近年はモノづくりの変化が急激で、DXが大きく進んでいます。それに合わせて、モノづくりも大きく変わっています。手仕上げが必要な生産工程はなく、すべてが機械化されています。それでも、手仕上げのノウハウがないと、優れたDX はできないのです。これからのモノづくりにおいても手でつくるスキルは重要で、だからこそ、一人でも多くの後輩にモノづくりの技術を伝えていきたいです。