東京オートサロン2024で新コンセプトを提案。事業化を加速
WELL Cabin Concept
世界最大のカスタムカーイベントで新ソリューションをお披露目
3日間で23万人が来場した「東京オートサロン2024」は、日本が誇る世界最大のカスタムカーイベントです。ここでは世界のカーメーカーが車の未来の形を提案するとともに、個性あふれるカーショップがチューニングやカスタムの腕を競い合う場であり、会場は自動車が大好きな人々の熱気に包まれます。
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社(以下、PAS)は、新たな車室空間のコンセプトを世に問うため、この会場にブースを初めて出展しました。自動車産業に携わる他社との協業の可能性を探るとともに、エンドユーザーの反応をダイレクトに感じ取るためです。
AV技術を活かした体験価値に手応え
PASは、パナソニックの強みであるオーディオ・ビジュアル技術を活かした2つのコンセプトカーを出展しました。いずれのコンセプトカーにも、55型の大画面透過型有機EL(OLED)ディスプレイ、3Dハイレゾリューション対応スピーカー、振動シート、香り空調制御などのハードを搭載。それぞれのコンセプトを実現するオリジナルの映像ソフトを没入感のある大画面で再生するとともに高音質と振動で、臨場感ある車室空間を実現します。
一つ目のコンセプトカーは、ターゲットユーザーにビジネスエグゼクティブを想定したWELL Cabin concept Aです。重要な決断や判断を連続して求められるビジネスエグゼクティブに、車内を快適な第二のオフィスとして提案します。仕事の効率化とともにくつろぎの空間を提供します。
二つ目のコンセプトカーは、急増するインバウンドを含むVIPをユーザーとして想定したWELL Cabin concept Bです。観光やスポーツ観戦の目的地等への送迎サービスの車内空間を高品質に演出することで、これまでにないワクワク感を刺激し、質の高いおもてなしの空間を提案します。
PASのブースでは、3日間でおよそ500人がコンセプトカーのデモを体感しました。初日のビジネスデーは、協業パートナーの候補として旅客・観光・架装業界関係者を招待し、300超のアンケート回答を入手。デモへの高い満足度を回答したお客様は9割を超え、サービスの利用を希望する割合は8割近くと、参加者の大半から高い評価を得ることができました。また、10を超える企業から、強い協業希望が寄せられています。メディア各社もPASの提案への関心が高く、会期中に17媒体23名のメディア関係者から取材を受けました。
今回の出展で得られた業界関係者やエンドユーザーからの反響や情報をもとに、PASは、WELL Cabin conceptの事業化検討を加速します。
事業化を目指してさらに活動の質を向上し加速
アイデアの検討から形にするまで、コンセプトカーを生み出した社員へのインタビューです。
ディスプレイ技術を核に自動車向け製品の開発を経験。5年間をアメリカで過ごし、欧米カーメーカー向けディスプレイの商品開発に携わる。車室空間ソリューションの重点テーマであるWELL Cabin Conceptの具現化に挑戦。
車載センサデバイスやコックピットHMIを中心とした新商材や新規事業の開発に従事。2023年9月から車室空間価値の事業化に向けて商品企画を担当。東京オートサロン2024の総括担当として、出展でもリーダーシップを発揮。
企業向け大規模システム商材のソフトウエア開発や商品企画に従事。2023年6月から車室空間価値の事業化に向けてUXデザインを軸とした商品企画を担当。WELL Cabin Conceptのコンセプトの策定や、ユーザーニーズの把握とシステムへの落とし込みに尽力。
Q 出展して、手応えはどうでしたか?
多田:当初の想定を大きく上回る、500人近いお客様にWELL Cabin Conceptをご体感いただき、私たちが提案する新しい車室空間価値を訴求することができました。ぜひ協業したいという引き合いを多数いただくなど、出展の狙いを果たすことができ、大成功の展示会だったと思います。
土屋:出展前は不安と期待が半々でしたが、予想以上にポジティブな受け止めが多く、大きな手応えを得られました。55型ディスプレイは車載用としては超大型で、評価が分かれると想像していたのですが、「すごい」「これほしい」など、エンドユーザーの皆さんの素直な声を自分で確認できて、とてもうれしかったです。
山崎:バレーボールチーム「パナソニックパンサーズ」の試合送迎をイメージしたWELL Cabin Concept Bを、ファンの方に体験乗車いただきました。試合映像や選手のメッセージに熱狂する、いわゆる「推し」の反応を肌で感じることができたのも、大きな成果でした。事業化にあたって、大きなヒントになりました。
Q 出展に向けて、チャレンジしたことは?
土屋:まず、私自身のマインドチェンジが必要でした。もともとカーメーカー向けの製品開発をやってきたことから、仕事では石橋を叩いて渡る慎重さや、カーメーカーから示された仕様に基づく製品設計を重視してきました。ところが、新規事業の推進では、自ら進むべき道を見つけ、スピード感を持って判断することも大切です。このマインドセットのアップデートに難しさがありました。
展示車両の開発では、多様なパナソニックグループの仲間と検討を重ねました。パナソニックホールディングスのR&D部門、デザイン本部、エレクトリックワークス社のライティング部門やHMIシステムズ事業部など、さまざまなメンバーと一緒にエンドユーザー目線で、あるべき車室空間の仕様やコンテンツの内容を検討することができました。
多田:カーメーカーへ販売する従来のビジネスとは異なり、既販車の車室内を改装し、エンドユーザーに新しい空間価値・体験価値を提供し、その対価を頂くという新しいビジネスモデルで、PASにとっても大きなチャレンジです。デバイス系出身でこれまでエンドユーザーの顔が見えない仕事に従事することが多かった私にとっては、考え方を大きく変える必要がありました。
山崎:これまでにない新たな一歩を踏み出すのはすごく大変でした。自分たちのマインドチェンジだけでなく、新しいビジネスモデルにチャレンジするために、社内のベクトルを合わせることにも難しさはあったし、実際に世の中に問うために、コンセプトを形にして、それを世の中に情報発信することも初めての試みでした。
Q 今後、チャレンジしたいことは何ですか?
山崎:協業を希望するパートナー候補とのコンタクトをスタートしました。事業化に向けては、今後も多くの壁や初めての挑戦が山積みだと思います。一方、新たなパートナーとの出会いで、さらに新しい気づきが得られ、それが商品や体験に新たな魅力を肉付けします。地道な活動を繰り返し、楽しみつつ、事業化を目指します。最初は小さく、軽くスタートしますが、事業を大きく成長させるためのスケール化にも併行してチャレンジします。
多田:出展準備中の昨年11月には、米Apollo社が当社事業の共同パートナーになるというニュースが飛び込んできました。私は、これは我々には大きなチャンスだととらえました。彼らの目的は、成長が期待される領域に潤沢なリソースを投入することで、PASの企業価値をさらに上げていくことにあるからです。一方で、しっかり結果を出さないといけないという危機感も感じています。この活動は、まだスタートラインに立ったばかりですが、危機感とスピード感をもって、事業化に向けて加速していきたいと思います。
土屋:実は、構想を始めた最初のアイデアでは、ターゲットユーザーは自分と同世代の共働き子育て世代で、仕事と家事・育児に追われ、疲れている夫婦が多いのではないか、それを移動時間で癒せれば、あたたかいくらしの実現に貢献できるのではないか・・・と考えたのが始まりです。WELL Cabin Conceptが世に認められ、自動運転の普及が進めば、この最初のコンセプトカーをぜひ実現したいです。
※文中の所属や役職は2024年1月現在のものです。