ストラーダ 業界初への挑戦
2003年に誕生してから、カーナビの歴史の一端を担ってきたパナソニックのストラーダ。数々の”業界初”を世に送り出してきた理由は何なのか。ストラーダの開発、宣伝に関わるメンバーに話を聞いた。
逆境から始まった、新製品開発。
地デジブームの後の2013年、カーナビ市販事業は危機に陥っていた。競争が激化し、コモディティ化が進むカーナビ市場に対して、訴求力のある商品群を投入できないでいたのだ。そんな中、あるワークショップが立ち上げられた。まったく新しく、かつ、お客様のためになる商品を開発するためのワークショップには、営業、商品企画、設計など、多くの若手を含む、さまざまな部門担当者が参加した。
「トップダウンというより、現場で危機感が共通化していました。それまではバラバラだった各部門の担当者が知恵を出し合い、有機的に検討したことで、商品の魅力も高まっていきました。」こう語るのは、当時、商品企画として開発に携わった向田さん。
「”みんなのクルマに大画面”というのがストラーダFシリーズの一貫したコンセプトです。ユーザのお困りごとを改めて考えた結果、どんな車にも取り付けられ、大きく見やすい新しいナビを実現するという方向性を定め、検討を進めました。当時は7インチ相当の限られたスペースにナビを収めることが当たり前でしたが、そのサイズ制約の解消に注力する事で、ディスプレイを本体から分離して浮かせて取り付ける、フローティング構造に辿り着いたのです。」
事業の危機からはじまった全部門が一丸となって検討する風土は、市販ナビ業界の常識を打ち破るフローティング構造、その後の車載初の有機EL搭載モデルの開発へとつながっていった。
お客様大事に立ちかえる
フローティングと有機EL。ストラーダと業界の歴史を変えた2つの機能開発に携わった技術者に話を聞いた。
フローティング構造の設計を担当した山崎さんは、入社3年目にして機構開発のリーダーに任命された。当時、パナソニックの理念をよりどころに開発に取り組んだという。
「フローティング構造の開発にあたって、『お客様大事』というパナソニックの理念に立ち返って製品を考えました。開発の基本であり最も大切な、お客様の困り事は何かを真剣に考えたのです。Fシリーズが発売されるまで、大画面ナビは搭載できる車種が非常に限られていました。特定の車両以外に乗っているユーザーは、大画面が欲しくても、その選択肢はなかったのです。大画面は求められているが、その大画面を取り付けられる車は少ない。お客様の困り事を解決するために、この二律背反を打ち破りたいという想いで生み出されたのが、フローティング構造のアイデアです。また、入社時の研修で、実際に店頭に立って商品を販売した経験から、開発に携わる商品は、私自身がお客様に売りたいと強く思えるものにしたいと考えていました。『大画面で、あなたの車にも取り付けられます』という売り文句はシンプルで分かりやすく、商品を販売していただくお店にとっても売りやすい商品になったと思います。『どんな車にも取り付けられる』というコンセプトは、車種別に在庫を持たないといけないというお店の悩みを減らすこともできます。ストラーダは、販売していただく方々にも喜んでもらえる商品を目指したのです。」
まったく新しい機構の開発には苦労も多かったという。
「やることすべてが新しい検討で、飛び出したナビのデザインなんて全く未知の領域でした。デザインモックを作っては、車両に持ち込んで、ああでもない、こうでもないと、どんな車両にも合うデザインを無我夢中で模索しました。開発を進める中で若手だった自分がどんなに失敗しても、周りのメンバーは文句を言うことなく前向きに協力してくれました。市販ナビ事業のトップも、私のような若手社員も、面白い商品を作るという一つの想いを共有して、一丸となった開発がおこなわれました。」
フローティング構造採用後に、新たに業界の常識を打ち破ったのが有機EL搭載モデルだ。
家庭用テレビでは、一般的になりつつある有機ELだが、車用ナビに採用するには、大きな課題があった。薄さや画面の美しさといった大きな魅力を持つ有機ELだが、温度、湿度、紫外線に弱い為、真夏の炎天下などの過酷な環境に晒されるナビへの採用は難しいと考えられていたのだ。
「有機ELは、利点も多い反面、扱いが難しい素材です。過熱や焼き付き*対策はナビに採用するにあたって大きな課題でした。」こう語るのは有機ELパネルの開発に携わり、業界初の新商品開発に大きな貢献をした中川さん。有機ELディスプレイを導入する際、有機ELテレビを開発してきたメンバーが強い味方になったという。
「当社の強みは様々な技術やノウハウと商品を開発してきたメンバーが集まっていることです。彼らと密に連携をとることで、テレビで蓄積されたノウハウを活用することができました。焼き付きを防止するために画面表示の仕方を工夫し、ハニカム構造を採用することで、熱対策や構造の強化をはかることもできました。開発メンバーの頑張りがあったからこそ、実現できたということは大前提ですが、非常に幅広い事業を扱うパナソニックだからこそ、可能になった部分もたくさんあったと思います。」
*残像の出現、パネルの変色などの症状のこと。
良い商品も、知ってもらわないと意味がない
長嶋さんは、長年ストラーダの宣伝を担当し、市場に商品の良さを広め続けてきた一人だ。
「ストラーダは、キービジュアルを作るところから商品企画などの部署と一緒に考えています。良い商品でも知ってもらわないと意味がありません。いかに商品の魅力を伝えるかという検討をワンチームで行うことで、宣伝においてもストラーダの強みが発揮されていると思います。」
長嶋さんは、デジタルコンテンツや広告媒体だけでなく、ユーザーと直接コミュニケーションをとる機会も大切にしているという。
「CMをはじめとした広告や、SNSなどは非常に有効な宣伝媒体ですが、車関連情報を扱うメディアが開催するリアルイベントに参加して、商品の魅力を驚きや感動として、お客様に体感していただくことも同じように重要です。生のやりとりでしか感じ取れない情報も、たくさんあります。そこで得たお客様の声は本当に貴重で、商品の改善に役立つと同時に、開発担当者のモチベーションアップにもつながります。そして、そういったやりとりに携われることで、自分自身のモチベーションも上がるのです。」
まずなによりも、“面白いからやろう”
業界初の商品を数多くつくりだしてきた秘訣は何なのか。中川さんは、社内の考え方について言及した。
「当社にはプロジェクトのメンバーが”面白いからやろう”と、協力してくれる風土があります。新しいことって、確認事項も多いし、リスクも多い。普通は、誰もリスクも負いたくないし、楽な開発をしたがるものです。だから通常、設計者は変化点を嫌がります。でも、当社のナビ開発メンバーは、なによりも面白いかどうかを重視します。幹部が後押ししてくれることも大きいと思いますし、職場として非常にチャレンジし易い環境だと思います。」 山崎さんもこう続ける。
「市販事業のメンバーは、とにかく自己アピールがすごい。やりたいことを日頃から声に出して表現しています。やりたいことを日頃から想いとして伝えておくと自然と味方が集まってきて、検討が加速します。そういう意味でも、新しいアイデアが育ちやすい環境だと思います。」
各部門が一体となって商品を考え、リスクよりも、いかに面白い開発に挑戦するかを大切にする。そんな風土を武器に、お客様大事の理念のもと、パナソニックのカーナビは、これからも進化を続けていく。
ストラーダコンセプトウェブサイト:ストラーダ コンセプト | Panasonic
パナソニック カーナビウェブサイト:カーナビ/カーAV総合|Panasonic