徹底したヒト研究が生み出す唯一無二の感触
コンビネーションスイッチの技術開発
コンビネーションスイッチは、クルマと人をつなぐ重要なインターフェース。その開発現場では、徹底した人の研究で、唯一無二のクリック感を追求し続けています。たかがスイッチ、されどスイッチ。考え続ける人がいるから、新しい価値は生まれます。
シェーバーの開発手法がヒントに
クルマのウインカーやワイパー、AV機器の操作や車内の温度調整など、ハンドルの近くに配置されたコンビネーションスイッチは、ドライバーが最もよく触れるパーツと言われています。このスイッチの操作感を極上のフィーリングに仕上げたコンビネーションスイッチ。マツダのフラッグシップカーであるアテンザやMAZDA3に搭載され、市場の高い評価を得ています。
パナソニックはクルマに不可欠な、さまざまなスイッチを生産しています。モノづくりを担う工場部門に加えて、最先端技術を研究・開発する技術部門、グローバル顧客のニーズを先取りする営業部門。なかでも、福井県敦賀市では、設計開発と製造、販売の、いわゆる開・製・販が一カ所に集まる利点を生かし、スピーディーな開発と顧客を満足させるモノづくりを実現しています。
始まりは2014年。マツダ株式会社は次世代車両の構想にあたって、人の感じ方や上質感を重視する方向へ転換。スイッチも、「正確な動作」「壊れない」といったそれまでの価値観ではなく、「人が触ってどう感じるか」を重視する開発への転換が求められました。
上質な使い心地とは? 模索を続けたパナソニックの開発チームは、パナソニック製シェーバーの開発手法に一つの解を見つけます。手にしっくりとなじむ心地よい握り心地は、解析で感性を“見える化”して生み出したものであり、その応用がスイッチの質感を高めることにつながったのです。
常識を捨て、開・製・販の連携で商品化
鏑木さんは、コンビネーションスイッチの設計者。今回の開発を、「それまでの開発とは次元が違い、ESC58 Typeの開発は、ドライバーが無意識に求める指の感触を探る道のりでした」と振り返ります。
技術者としての常識を捨て、解析チームとの連携で、全てのパラメーターを調べ直し、求める操作フィーリングを実現するためのメカニズムを確立。指の力が、レバーからどこにどう伝わっていくのかを理解し、ならば部品の形状と材質はこうあるべきと導き出すなど、設計開発のやり方を根本から改めたのです。
設計したスイッチを商品化するためには、「量産」の壁を越えなければなりません。試作が成功しても、量産品で性能が出ないことはあるのです。ここで、開・製・販が同じ場所にいる強みが発揮されました。開発と製造は密接に連携し、営業は顧客の声をフィードバック。日本のモノづくりが得意とするすり合わせで、品質を高めていきました。
お客様の声
マツダ株式会社 車両開発ご担当者
新しい価値、WOWを創出しよう
最後の最後までより良くすることに、もがいた結果、コンビスイッチの操作感が、市場からご評価をいただいています。うれしいですね。必ず、市場で評価されると思っていましたが、これほど評価されるのは、例がないので、私もうれしいです。まさにwin-winです。かかわったメンバーの皆さまにもお知らせください。そして、ありがとう とお伝え下さい。今後も、誰もやっていないこと(FSのような昔からあることでも、wowはできるのです)、新しい価値を創出し、他とは違う製品を世に出すことに、ご協力をお願いします。
※FS…Force to Stroke ここではスイッチを動かす時に込める力のこと。
開発者の声
HMIシステムズ事業部 機構デバイスビジネスユニット 鏑木さん
世の中に求められるスイッチをつくり続ける
スイッチはクルマの操作に不可欠な存在ですが、スイッチの存在を意識することはあまりないと思います。ところが、この商品が世に出て、カーメーカーやその先のお客様、マスメディアからも評価をいただいて、頑張っただけの価値はあったと、とてもうれしく思います。細かい努力の積み重ねがクルマの評価につながるのだと、初めて肌で感じました。おかげさまで、他のカーメーカーからも引き合いをいただいています。こうして世の中から認められるのは、設計者としてとてもやりがいを感じます。業界が自動運転に向かう中、自動運転で求められるスイッチ、インターフェースの開発にも取り組んでいきます。