カーメーカーの要望を追求し、とことん調整する力が信頼に ~一からカスタム対応する技術力~
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)様Lexus LMに当社の後席48インチディスプレイシステム(以下、48インチディスプレイ)が採用されました。当社の48インチディスプレイが車両に採用されたのは初めてとなります。クルマにこの大きさのディスプレイを載せるということが業界としても珍しく、カーメーカーの要望に応えるカスタム対応力とそれを支える技術力がこの製品を生み出しています。現場で全力を尽くした技術者へフォーカスし、開発エピソードやその苦労を取材しました。
私は、48インチディスプレイの前商品である26インチのディスプレイから電気回路設計として、関わり始めました。入社してから後席ディスプレイシステム一筋で仕事に取り組んでいます。
当時の松下通信工業に入社、携帯電話事業が全盛期を迎えているころで、周りはその事業に関わりたいという人が多かったのを覚えています。私は、カーナビの仕事をやりたいという思いで、配属について人事と調整していった結果、現在の部署に配属となりました。
今回の開発プロジェクトがスタートした際を振り返ってください。
当初は、前のモデルを踏襲した26インチディスプレイを前提にして、機能を進化させたり、リーズナブルにするということを具現化していく計画でした。ところが話が進んでいくと、前のモデルが中国の富裕層向けでもあることから、もっと新しい取り組みができないかという話になり、26インチよりも大きなディスプレイを載せて、インパクトを出せないかという要望がカーメーカーからありました。カーメーカーの要望を満たす製品がこの世に存在せず、暗中模索の中、検討を進めていったことが印象的です。
大きく見せる案として、初めは26インチを2つ横に並べて大きく見せるという提案を行いました。
各々のディスプレイを一つとして運用するシステムは既にあり、ソフト面に関してもある程度の作りこみが出来ていたので、開発期間を短縮できるメリットもあることから提案していたのですが、やはり一つの大きなディスプレイで完結したいという強い要望により、目の前が真っ白になったことをよく覚えています(笑)。
そこから、一つの画面で見たいという要望をクリアするため、一から液晶の開発をスタートしました。当初、協力いただいているサプライヤーの液晶ディスプレイメーカーからも商品化は難しいということを何度も言われていました。しかし、カーメーカーからの熱意もあり、これに応えなければいけないという思いの中で取り組んできました。今回の車両自体が後部座席の快適性にこだわっておられ、ディスプレイの上には昇降ガラス、下には冷蔵庫があるので、ディスプレイのサイズは一定の幅に納めなければならないという制約もありました。そのような中で車載法規も満たさなければならない難しさがありました。
その苦労はどれぐらい続いたのでしょうか?
主要な部品となる液晶ディスプレイを一から開発したことから、クルマの仕様に合わせてどこまでの仕様のものを作れるかということを最後の最後まで調整してきたのが印象的でした。できるだけ大きなサイズで出来ないかということをカーメーカーに言われましたが、それができない理由が、強度や振動の問題にあるといったことを論理的に丁寧に説明する必要もありましたし、液晶ディスプレイはサプライヤーに協力を得ていたこともあり、社内だけでなく、多方面で調整しなければなりませんでした。
その苦労の結果、無事に製品化することができ、カーメーカーからも技術の部で感謝状を頂くことができたので、苦労した甲斐があったかなと思っています。
今回の経験を今後、どのように生かしていきたいですか?
今後、クルマの概念が変わるタイミングにあると思います。今は乗用車の形を取っているが、例えば、コミュニティカーで言った場合、後部座席という概念自体が無くなる可能性もあるのではないかと思っています。景色を楽しめるように周り全てが、ガラスとディスプレイ一体化になるといったこともあり得るかもしれません。既に実証実験なども色んな会社が行っていると思いますが、とにかくカーメーカーからの要望は思いもよらないところに及んでいくことを考えると、こうしてカスタム対応できる技術力を培っていくことは、競争で打ち勝つために重要な要素になりうると思うので、引き続きカーメーカーやユーザーの視点で新しいシステム開発に取り組んでいきたいです。