パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 Panasonic AUTOMOTIVE

 

Panasonic AUTOMOTIVE

 
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社

着実な信頼獲得の歴史と新規製品開発への挑戦

日産自動車株式会社(以下、日産)様セレナに当社の電子ミラーとドライブレコーダー連動システムが採用されました。同社への電子ミラーとドライブレコーダー連動システムは初採用となります。安定的な採用実績に慢心することなく、積極的なソリューション提案をしなければ、生き残れる道はないと考え、パナソニックとして初の純正ドライブレコーダーとの連動実現を目指し、ゼロから開発。現場で全力を尽くした技術者の挑戦ストーリーをご覧ください。     
今回の採用に至った電子ミラーとドライブレコーダーそれぞれの開発担当者へフォーカスし、開発エピソードやその苦労を取材しました。 

開発担当者

上田さんと粟津さんは、2018年ごろから本格的に電子ミラーの開発設計をスタートされましたよね。当時のことを振り返って、教えてください。

粟津さん:もともと当社は、当時世界初の電子ミラーとなる日産様向け「GEN1」からスタートし、私は、「GEN1」の一部であるLCDモジュールの開発を担当していましたが、今回のモデルから製品全体をフォローすることになり、そのプレッシャーがあったことは今でも覚えています。

上田さん:今回のセレナは7車種目の採用となっていますが、初期から関わっていたわけではなく、それ以前は電子サイドミラーの開発に携わっており、お客様も環境も変わった中で、スピード感を持って対応しなければいけなかったことは印象的でした。

粟津さん:そうでしたよね。ミラーは重要な部品ではあるのですが、車両開発の終盤から動き出すことが多く、開発日程が短くなりがちです。1年程度の短期開発で、多くの車種と同時並行で搭載検討を進めていくことに大変さがありました。

左:電気回路設計の上田さん 右:機構設計担当の粟津さん
左:電気回路設計の上田さん 右:機構設計担当の粟津さん

厳しい基準となる車載品質を満たすという上での苦労などはありましたか?

粟津さん:ミラーは、顧客要求だけでなく、法規もクリアしていく必要があります。たとえば、ミラーの位置は車両前方座席の真ん中にありますが、ここで高い振動性能を要求されます。      
これは運転中にミラーが揺れてしまうと、実際に映し出される反射像がぼやけて見えにくくなってしまうからです。電子ミラーは液晶部分を搭載している分、重くなっていますが、この現象を防ぐために、製品が最も揺れる共振点を高くし、振動への耐性を向上させています。一方で、法規として人の頭がぶつかることを想定した試験でミラーが脱落しないといけない面もあり、高い振動性能と法規適合を両立することが非常に難しかったですね。

上田さん:また、法規では、セレナからUN-R158(後退時車両直後確認装置に関する基準)の関連で、電子ミラーにも仕様が追加されました。従来は電子ミラーがディスプレイモードの時のみ、ミラー代わりの後方映像に加えて車両後退用のリアカメラ映像を2画面で表示していましたが、ミラーモードでもリアカメラ映像を表示することが必要となり、法規解釈や、商品性の判断など重要な部分を仕様決定の初期段階から日産様と一緒に検討させて頂きました。

粟津さん:こうしたことをしっかりと開発設計段階から検討、製品に反映していくことでこれまで電子ミラーは大きな品質問題に発展することなく、安定的に実績を積み重ねていくことに繋がっているのかなと思っています。

今後どのように製品展開していきたいと考えていますか?

粟津さん:これまでも日産様以外にも展開されていますが、クルマの電子ミラーと言えば、パナソニックと言われるぐらいになりたいし、その一端を担っていきたいと考えています。

上田さん:私は、さらなるグローバルな展開と、もっとローグレードの車両にも搭載率を上げて、一人でも多くの方に体験していただきたいです。

粟津さん:今後、フルHDの液晶としての高精細な画像を映し出せることが求められていくと思います。また、ミラーの搭載位置を活かし他機器との連動を含めたソリューションシステムとしてパナソニックならではの特長が出していければと思っています。

上田さん:後ろに近づいてくる車両の検知などを本格的に行い、あおり運転などの抑止に繋げていきたいと考えています。雨天時や霧が多いといった、環境条件が厳しい中でも高精細に映像を映し出すこともまだまだ改善していけるはずだと考えています。

着々と採用実績を積み重ねてきた電子ミラー。しかし、この実績だけに満足することなく、電子ミラーと連動する純正ドライブレコーダーの開発にも着手していきます。クルマ業界は、100年に1度の変革期。いつ受注がなくなってもおかしくないとの危機感から単品ではなく、ソリューションシステムとして訴求していくことを決意。結果、純正品としての採用までにつながっています。

ドライブレコーダーのシステム開発は2020年2月から開発がスタートされています。この開発プロジェクトの中心メンバーであるお三方から、当時を振り返って教えて欲しいです。

永野さん:私と大久保さんは、元々電子ミラーの設計開発に携わっていたところから、このプロジェクトに関わるようになり、ドライブレコーダーの機構設計を大久保さん、電気回路関係の設計を、私が担当しました。社会問題にもなったあおり運転などの対策として、カーメーカーからの需要に応えたいという背景でスタートしました。

久米さん:私は電子ミラーとドライブレコーダーのシステム設計、それぞれの製品のインターフェースを整理、仕様化することを中心に行ってきました。

永野さん:プロジェクトのキックオフ時点から、システム設計、ハード設計、ソフト設計の方々が連携して、ドライブレコーダーとは何かという定義づけ、どのような基本機能であるべきかという議論から始まっていましたよね?

久米さん:そうですね。ドライブレコーダーは新規製品なので、車載品質を満たすために、製品の本質機能は何かということを定義することから始め、その前提の下、どのような故障ケースが考えられるかを一つずつ分析していきました。システム設計だけでなく、機構や電気回路設計、ソフト設計、品質管理部門の皆様とも連携し、電源がショートした場合、落下や脱落した場合、録画できない場合といった故障ケースの抽出と、故障ケースが発生した場合にどのように安全を担保するのか?といった安全設計をシステム全体の視点で考え、起こりうる問題の潰しこみも行ってきました。

永野さん:ドライブレコーダーは本当にゼロからのスタートでしたよね。録画するための製品なので、録画できないケースを徹底的に洗い出しました。

開発段階での苦労やエピソードを教えてください。

システム設計担当の久米さん
システム設計担当の久米さん

久米さん:システム間の動作の整合性を取る部分に苦労しました。これまでの電子ミラー単体の場合は、電子ミラーの制御仕様のみに則ってカメラ映像を表示することを考えればよかった。しかしドライブレコーダーが介在する場合、ドライブレコーダーが電子ミラーにカメラ映像を転送する準備が出来てから、遅延を限りなく小さくした上で、電子ミラーの制御を開始するなど、システム間の動作の整合を取る必要があります。      
ドライブレコーダー自身のシステムの故障だけでなく、他のシステムが故障した場合の対応も考える必要があります。 また新規開発のドライブレコーダー単体で考えても動作、録画する条件が複数ある点が苦労した点です。例えば通常の常時録画モード以外に、車のエンジンを停止して人が離れているときに、車両窃盗や事故などで揺れを検知した際に動作する緊急録画モードなどがあり、各モードの検証が大変でした。

永野さん:システム設計の期間は大変でしたよね(笑)。少人数でよくまとめられたな、というのが印象に残っています。久米さんにはハードウェアの制御仕様書を設計する際にも、単純にハードを動かすだけでなく、どのような安全設計が必要かということを考慮して決めてもらいましたね。

久米さん:カーメーカーの純正品となると、お客様からも厳しい要求仕様が指定されています。単に「ドライブレコーダーは録画できればOK」という訳でなく、「厳しい環境化でも確実動作できること」「他の機器に迷惑をかけない水準の電磁波しか出さないこと」が求められるのですよね。これが車載品質と言われる難しい部分の一つで大久保さんには機構設計視点でノイズ耐性が強く、ノイズを出さない、素材や構成を検討いただいてました。永野さんは電気回路設計視点で、ノイズを出しにくい電気回路構成や使い方を非常に細かなレベルで調整、工夫頂いていましたよね。

永野さん:そうですね。電気回路設計としては要求されている機能を実現し、利益を確保できるような安価な部品を選定し、かつ決められたサイズに収めつつ、ノイズや熱の性能を成立させる、といった複雑なパズルを解くような設計が必要でした(笑)。これらを実現するために、よく大久保さんとはやり取りをして、ノイズをおさえるための筐体設計や、いかに小さな筐体の中で効率よく冷却するか、どのような形状が最適か試作を繰り返したように思います。

大久保さん:どうしてもシステムやソフトにおける要望は後付けで増えてくることが多いので、元々の基本仕様より熱やノイズの問題をクリアするための条件が厳しくなることがよくあります。限られた条件かつ短時間でクリアしなければならないため、それに柔軟に対応していくことは大変でした。

永野さん:大抵の場合、車両発売日程が初めから決まっていることがほとんどなので、前段階のステップが遅れてくると、そのしわ寄せは機構設計におよびがちで、大久保さんには迷惑をかけました。プロジェクトを担当する当初はゼロからやる大変さを認識していなかったので、それを知っていたらまた同じように決断できるかどうか・・・悩んでしまうかもしれませんね(笑)。

大久保さん:新規製品開発でもあり、このプロジェクトに関わる人数が適正なのかは分かりませんが、それでもこの少数精鋭でお客様の日程を守ってやれたことはある意味自信を持って良いのかなと考えています。

左:電気回路設計担当の永野さん 右:機構設計担当の大久保さん
左:電気回路設計担当の永野さん 右:機構設計担当の大久保さん

製品が完成した時の気持ちはいかがでしたか?今後の製品展開についても教えてください。

大久保さん:車が市場に展開されるタイミングはかなり後の時期になり、次に新しい開発案件が始まってしまうこともあって、正直実感がわくタイミングがないということはありますね(笑)。

永野さん:今回の純正ドライブレコーダー開発案件として、社内外から様々な賞を受賞することができました。いろいろな苦労はありましたが、既存製品を進化させる形で受賞することができたことに感慨深さを感じるとともに、製品開発時の苦労が報われた気がします。中途で入社して約5年になりますが、こうした形での評価ははじめてだったので、素直にうれしかったです。

久米さん:単一の製品だけでなく、複数製品のシステム設計を出来たということは自信につながりました。これから車室内の様々な製品がネットワークで繋がって、連携動作していくと考えています。様々なデバイスが連携することで、個々の商品価値を高められる車載商品をシステムアーキテクトとしては実現していきたいです。あわせて、海外向けの車種についても採用されるように進めていきたいです。

大久保さん:さらに自分のスキル・経験を高めていきたいです。今回得たノウハウを関係部署とも連携することで事前に機構設計で起こりうる想定トラブルの抑止を目的とした勉強会なども開催して、効率よく開発設計をしていけるようにしていきたい。

永野さん:ドライブレコーダーの基本機能は「記録する」というものですので、しっかりとその場面を記録しつつ、使う方にとって使いやすい・壊れない製品を開発し、もっと多くの車両に展開していくことを目指したいなと思っています。

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