移ごこち∞まだ見ぬ移ごこちをめざして。

移動は「体験」で選ばれる時代へ。
「移ごこちデザイン」と
車内空間UXのこれから

近年、車内で過ごす時間がどれだけ「ここちよい体験」であるかが、クルマ選びの基準として重みを増し、クルマの価値は走りやスペックだけでは測れなくなってきています。こうした変化の中で、パナソニック オートモーティブシステムズは、「移ごこちデザイン」という独自の視点から、移動における新たな価値創出に取り組んでいます。
今回は、副社長執行役員の水山と執行役員の大田へのインタビューを通じて、当社が描く「移ごこち」の現在地とこれからを探ります。

これからの時代、
クルマは「体験」で選ばれる

水山

電動化や自動化が進む中、いま「クルマを選ぶ基準」はどう変わってきているとお考えですか?

水山

一般に、電動化が進むことによって、クルマの走行性能での差別化は困難になっていくといわれます。さらに自動化が進めば、将来的に人は運転からも解放されます。そうした変化を背景に、クルマの「スペック」から、だんだんと移動中の「車内体験」がより重視される傾向が強まっているとみています。
実際、かなり前から、クルマの価値に対するユーザー評価を見ていても、例えばカーナビのようなIVI(※)の出来や不具合によって満足度が大きく変わる、という話もあります。そういう意味で、クルマでも乗っている間の体験、つまりUX(※)のウェイトが非常に大きくなってきています。
要するに、純粋な性能差だけでなく、「乗っているときに迷わない」とか「イライラしない」というようなことが、ユーザーから選ばれる理由になりつつあるのです。

  • ※1 IVI:In-Vehicle Infotainment(車載インフォティメント)の略。車内で用いる情報や娯楽を提供するシステムのことを指し、カーナビやオーディオ類も含まれる
  • ※2 UX:User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略。製品、サービスを通じて得る「ユーザー体験」全般を指す用語

「移ごこちデザイン」カンパニーとして、メーカーと一緒に車内体験を形にしていく立場から、社会の中でどのような役割を果たそうとしているのでしょうか。

水山

我々は長くコンシューマー製品を手がける中で「人」を中心においたものづくりを積み重ねてきました。そのカルチャー、DNAを活かして、自動車に新たなユーザー体験をもたらすことが使命だと考えています。
そのために掲げたのが「移ごこち」です。クルマというハードウェアの枠を超えて、もっと移動そのものの価値、移動中の感じ方、行動も含めた体験をよりここちよくするための方向性を指し示す言葉です。
SDV(※)の時代では、ソフトウェアで機能を足すだけでは差別化が難しい。そこで大切なのは、「体験の一貫性」です。機能が増えても操作法がバラバラでは、使うたびに迷いが生まれます。一方、次に何をすればいいかが自然にわかる設計なら、説明書に頼らずとも使いこなせます。
我々は、機能を増やす競争ではなく、体験の一貫性を磨き上げることで新たな価値を作りたいと考えています。SDVでクルマの価値も多様化するほど、その重要性は大きくなるでしょう。

  • ※3 SDV:Software Defined Vehicleの略。ソフトウェア更新によって機能や体験が拡張・進化していくクルマのこと
大田

大田さんの立場からは、この先どんな価値を届けていきたい、という構想をお持ちですか。

大田

家の中にいるときの行動を観察すると、音楽を聴きながら料理をつくるとか、テレビをつけたまま資料に目を通すなど、誰しも「ひとつのことだけ」をしている時間の方が少ないですよね。みんな自然と並行して複数の事をしています。
その感覚は、クルマの中にも入ってくると思っています。移動の合間に買い物をしたい、さっき家で見ていた映画の続きを観たいなど、生活の続きをそのまま持ち込めるようになる。運転や移動だけではなく、「やりたいこと」がクルマで移動している時でもスムーズに繋がっていく。そうした体験こそが、人を中心に考えた新しい価値だと思います。
私たちが目指したいのは、生活とクルマ、さらには他の移動手段も含めて、体験を途切れさせないこと、つまり「シームレス化」です。移動時の制約を減らして、できることを広げる。そのうえで、もっとワクワクする「体験」を提供していきたい、それが「移ごこち」の新しい柱だと思っています。

新たな「移ごこち」をつくる
「ひと研究」とは?

UXや「体験価値」に関連して、当社では人間一人ひとりの状態を理解するための「ひと研究」に力を入れていますが、それをどのように「移ごこち」に活かしていくのですか?

水山

パナソニックグループとして、人・くらしに寄り添ってきた知見をモビリティ分野に活用し貢献することが求められてきました。当社では、車内を快適にするという意味も込めて、「ひと研究」に力を入れています。もちろん、一企業単独でできるものではないので、大学などとも連携しながら行っています。
具体的には、まずは「人」に共通する特性、特にUXに関係しそうな感覚について、視覚から得られる情報も含めて深く理解することが重要になります。感覚という“センサー”から入ってくる情報を、脳がどう認知するかといった基本的な研究から深めていき、その知見を、例えば視覚的な情報提供のあり方へとつなげていきます。

一例をお話しします。人は目に入ってくる情報をそのまま全部処理しているのではなく、脳に蓄積した過去の体験に基づいて“予測”しながら処理しています。ところが、その予測に反するものが視覚に現れると注意がそちらに引っ張られてしまいます。
ですから、運転中の情報提示では、必要以上に注意を奪わない設計が重要になります。言い換えれば邪魔にならないようにする。これを技術用語で言うと「ディストラクションが低い」、つまり“注意を奪う度合いが小さい”状態をつくるということです。
これは単に安全のためだけではありません。乗っている人が常に「ディストラクション」を受ける状況、要するに注意を散漫にさせられると、とてもイライラしてくるし、ストレスも溜まります。一方でディストラクションが低ければ、より快適な体験が得られます。運転中に「いま何を見ればいい?」という迷いも起きない。これも「移ごこち」の土台です。

「移ごこち」を“形”にする
技術

続いては「移ごこち」を形にする話です。最近、UX分野で新たな技術を提案されたそうですね?

水山

私たちは統合的な運転の快適性や安全性、UXを支える「技術基盤」を開発しています。その一例が「Unified HMI」です。
これは、車内のメーターパネルやヘッドアップディスプレイ、各種モニターなどを統合的に扱えるようにする技術です。画面が増えても情報が散らからず“迷わない車内体験”につながるもので、技術のオープン化も含め、開発を効率化しやすい仕組みとしても活用できるよう検討しています。

ユーザー体験の視点から見ると、AIで移動体験をどう変えられそうですか?

大田

機能が高まれば高まるほど、操作は難しくなる傾向にあります。そこを、AIでサポートしユーザーがストレスなく操縦に集中できるようにしていきたいと考えています。例えば、
今まで1つのキーでクルマを開けていたものを、顔認証やスマートフォンのBluetoothで個人認証するようにすれば、「今日はどの人がドライバーなのか」を把握でき、ドライバーの特性に合わせた設定にインターフェイスのGUI(Graphical User Interface)などを自動変更することができます。
乗員ごとに聴きたい音楽が違う場合は、それぞれの席で好きな音楽を別々に流すこともできますし、ドライバーが音楽より注意喚起の警告を優先して聞きたい場合は、警告を優先させる設定にもできる。個々の異なるニーズに応えられるようになるわけです。
また、サーモグラフィーなどのセンシングが搭載されれば、寒がりな人ならシートの温度を自動で少し上げてくれるとか。結果として、毎回設定をやり直す手間を減らせます。
人によって趣向も多種多様なため、クルマに取り入れる機能の選択肢はどんどん増えていくでしょう。でも、その人に合わせた最適なものを提供する技術を開発することで、使い勝手の難しさを取り除いていけます。説明書を少なくしていくのと同じで、個人の感情推定と行動推定を掛け合わせたものを自動的におすすめしてあげる、ユーザーの予兆を捉えて先回りする、そういう方向が考えられますね。

水山

今後、これらのことに継続して取り組んでいくことが、我々の“らしさ”にも繋がっていくのではと考えています。

パナソニック オートモーティブシステムズが届けたい未来の価値。
「移ごこち」のその先へ

最後に、世界一の「移ごこちデザイン」カンパニーを目指すうえで、社会やユーザーにどんな価値や体験を届けていきたいのか。あらためてお二方からメッセージをお願いします。

水山

当社の強みは、SDVという流れの中で不可欠になるソフトウェアや、コンピューティングの領域にあります。これまでクルマメーカーさん向けに実績を積み重ねてきた知見や技術を土台に、今後はUXの分野もさらに磨き上げていきたいと考えています。そして、クルマの中だけに留まらず、MaaSのような世界を含めた「トータルの移動体験」まで、我々が支えられる領域は広がっていくでしょう。
将来的にはクルマ以外のモビリティ、例えば航空機のような領域にも、体験という観点で「移ごこち」の世界を広げていきたい。我々のベースにあるUXと、ソフトウェア、あるいはそれを支えるコンピューティングプラットフォームの技術を活かしながら、移動体験をトータルで支えられる存在として、お客さまから頼られる存在になっていきたいと考えています。

  • ※4 Maas:Mobility as a Serviceの略。電車・バス・タクシー・シェアなど複数の移動手段を、アプリ等で検索・予約・決済まで一体で使えるようにする考え方・サービスのこと。

大田さんからも一言お願いします。

大田

人の尽きない期待や、進化への欲求を、常に超えていけるような企業でありたいと思っています。そのためには、人の潜在的なニーズをきちんと把握し、形にして、進化させていける。そういう会社になっていきたいですね。
もちろん、多くのお客さまのお役に立っている既存事業や、その進化から誕生した新たなサービス、さらにはこれからチャレンジしようとしているMaaS系のサービスも含めて、当社が提案できる「私たちの生活を変えられるチャンス」は、まだまだたくさんあります。だからこそ、新たな分野にも会社としてチャレンジしていけたらと考えます。

  • 水山 正重

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社
    代表取締役
    副社長執行役員、チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)

  • 大田 馨子

    パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社
    執行役員
    ジャパン・チーフ・エグゼクティブ・オフィサー (Japan CEO)

2027年4月、
私たちはモビテラ(株)に、
社名変更いたします。

2027年4月1日、パナソニック オートモーティブシステムズ(株)は、
モビテラ(株)に社名変更します。新社名に込めた想いや、
新しく生まれ変わるロゴマークについて、社名変更特設サイトでご紹介しています。

モビテラ(株)

モビテラ、
社名変更特設サイト公開中