移ごこち4デジタルで移動をスマートに。

ビジネスニーズを引き出す。
仕事の「移ごこち」を
デザインする
アプローチとは?

クルマに乗って働く人にとって、車内空間は大切な「職場」。パナソニック オートモーティブシステムズでは、ビジネス現場における「移動」と「業務」が掛け合わさった複雑な課題に挑み、人間中心設計(Human-centered Design:HCD)の専門家チームを中心に、企業とそこで働く人々のニーズを発掘し、より効率的で快適な「移ごこち」をつくりだしています。今回は、実際にユーザー視点で事業者向けのサービスを形にしてきた3名の社員に、その舞台裏を語ってもらいました。

現場を見つめて、
潜在的な課題を掘り起こす

まずは皆さんの役割を教えてください。

小田原

新事業推進室でプロダクトマネージャーを務めている小田原です。新事業推進室は、当社のメイン事業であるOEM事業とは別に、新たなサービス、製品をつくり出し、世に提案するチームです。私はシステム開発の取りまとめ役として、どの機能を優先するのか、どんな段取りで開発を進めるのかを考える立場です。

飯野

UXデザインを担当している飯野です。まずユーザーが働く現場を観察し、そこで見えてきた課題を分析します。そのうえでプロトタイピングを行い、解決の方向性を可視化します。こうしたプロセスを通じて、クルマに乗って働く人の体験をデザインするのが役目です。

中村

マーケティング担当の中村です。顧客との商談やインタビューを通じて得られた課題やニーズをもとに、データを分析し、どのような価値が提供できるか、どのようにプロモーションすれば正しく価値を届けることができるか検討・実践しています。開発チームと共に新機能の企画や改善を行い、顧客体験を磨きながら、ユーザーの課題解決を目指しています。

小田原 義将​

どのような流れで、ユーザー自身も気づかないような「課題」を見つけていくのでしょうか。

小田原

そもそも、コンシューマー向けとビジネス向けでは、提供したい「体験価値」が違います。コンシューマーの場合は「わくわく」であったり「楽しい」であったりという価値が重視されるのに対し、ビジネス向けでは「効率化」や「マイナスを減らす」ことが重視されます。

飯野

実際には、現場に足を運んで課題を見つけていくこともあります。事業社の方へのインタビューでは、最初「残業を減らしたい」など、ぼんやりした悩みがよく聞かれました。背景を探ると、伝票の住所をもとに配送順番を組むだけで2時間近くかかるというのです。さらに、現場で業務に携わるクルマへの“同乗調査”では、仕事の邪魔にならないよう気をつけながら助手席に乗せてもらいました。そこでは、新人は設置場所がわからず、一度クルマを降りて現場に走り、確認して戻って運ぶといった二度手間が生じていました。小さな作業が積み重なって大きな非効率が生まれていたのです。また、雑談をしながら距離感を詰めていき、時にはドライバーの「独り言」からヒントを探します。ナビを操作しながら小さな声でふとつぶやかれた言葉を聞いた瞬間に、私は「今のが課題!」と頭の中で赤丸をつけていました。こうして、業務に時間が掛かっている理由や、属人化している課題の解消などに問題を分解していきます。

中村

マーケティング担当として、展示会に出展して製品の説明をすることがあるのですが、特定の機能について、ある人は「便利だ」と言い、別の人は「必要ない」と真逆のことを言います。それを記録して後で整理すると、意外に共通項が見えてきます。「不便さの基準」が人によって違うだけで、根本にある課題は一緒だったりするんです。

実際の開発はどう進めていくのですか?

小田原

まずペルソナを立て、カスタマージャーニーを描き、利用シーンを具体化して整理します。その上でプロトタイプを触ってもらい、続いてβ版を導入して、実業務の中で検証します。改善を繰り返しながら最終的にリリースに持っていく、という流れです。試作と改善を往復しながら少しずつ精度を高めていくイメージですね。

飯野

話を聞くだけでは信頼関係も深まりません。「私たちはこう考えています」と、具体的な形、プロトタイプを見せて意見を聞き、その内容をさらに開発に落とし込む。最初のプロトタイプはボタンを押すと画面が切り替わる程度のものでもよく、イメージを共有した上で、ユーザーの反応を見るのが大切だと考えています。

飯野 麻衣

サービスデザインにおける、
パナソニック
オートモーティブシステムズ「らしさ」とは

中村 英史

一連の開発のなかで、御社「らしさ」はどこに表れているでしょうか?

小田原

私たちが大事にしていることは「どれだけ多くの会社、多くの人の課題を解決できるのか?」という点です。クルマという、移動や物流の重要なインフラを扱っていますので、私たちの提供する「価値」が、世の中を良くすることができるようにと考えています。

中村

多くの人にとっての課題を解決する中でもN=1、つまり個々の事象は大切にしていこう、というのが私たちの考え方です。通常、事前の市場調査からサービスを提供する業界を定めますが、N=1である現場と市場全体の課題感を見極めながら適宜方向を修正しています。また、プロモーションだけに留まらず、開発チームと共に「価値」のあるプロダクトをつくっていく、サービスデザインの領域までタッチできるのはパナソニック オートモーティブシステムズらしさかもしれません。

飯野

組織面でいえば、私たちの部署には、営業担当からマーケティング、デザイン、データ分析、開発まで、幅広い職能を持ったメンバーが揃っています。それぞれ担当の製品を持ちながら横断的に協力してプロジェクトを進めているのも特徴ですね。

小田原

当社の他部署と異なり、スピード重視で、できるだけ早く開発サイクルを回すのは新事業推進室ならでは。いわゆるアジャイル開発※1を取り入れながら、今後SDV※2時代に対応するためのスピードを、社内他部署に先駆けて身につけようとしている部分もあります。

  • ※1 アジャイル開発…ソフトウェア開発手法のひとつで、機能ごとに小さな単位で開発工程を繰り返しながら進めること。仕様変更に強く柔軟に対応できる
  • ※2 SDV…Software Defined Vehicleの略で、ソフトウェアによって車両の機能を定義したり更新したりするクルマのこと

飯野

当社の主力であるOEM事業との違いはそこですね。クルマの部品を扱う以上、安全性、確実性は絶対。当然開発手法もウォーターフォール型※3になります。

  • ※3 ウォーターフォール型…アジャイルとは逆に、最初から細部まで設計を煮詰めてから順次開発を進める手法のこと

小田原

スタートアップ企業との違いもあります。それは「安全、品質」を重視するやり方がキッチリと根付いていること。早いだけではなく「品質を保つためのおさえるべきポイント」が分かっていますので、社内に蓄積された知見も活かしつつ「早くて品質も高い」製品を提供できると自負しています。

現場とともに育て続ける
「移ごこち」。
長く使うものだからこそ、
一緒に解決していく

それぞれの製品を導入した後のユーザーの反応はいかがでしたか?

小田原

業務効率化に特化した事業用カーナビアプリの「Gorillada PRO」を電力会社に導入した際、タブレットにアプリを入れて渡したところ「これが欲しかった」と言って、喜んで触ってくれたことを覚えています。彼らの業務に合ったナビを提供することができたからでしょう。

飯野

ITツールを使い慣れていないユーザーもいるので心配していましたが、実際に動くアプリを持ち込んで使ってもらい、「これなら使えそう」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。

皆さんの製品を長く使い続けてもらうために、今後どんな活動が必要でしょうか?

飯野

長く使い続けてもらうには、人の感情や習慣を経由するステップが不可欠です。新しい価値提案と、現状を踏襲することのバランスをとりながら、信頼を積み上げていく。そこを丁寧にやるほど、最終的に効率が上がり、業務に寄与できるところまで到達できるはずです。

小田原

最初から完璧な製品はつくれません。現場とともに改善を積み重ね、製品を育てていく。その感覚を共有することが、長く使っていただく鍵になるでしょう。

中村

価値を伝えることは、製品と同じくらい重要です。特に、企業の管理層、ベテランの方、新人の方、すべての層に対してそれぞれに適した形で価値を伝えていく必要があります。私は営業・マーケターとして顧客接点をつくり、できたものをどう感じてもらうかに注力して、開発側の努力が正しく伝わるように今後も動いていきたいと思います。

※ 記事内容は公開当時のものです

  • 小田原 義将​

    2022年に入社し、新事業推進室にてナビアプリ事業の開発に従事。現在は業務用カーナビアプリ「Gorillada PRO」のプロダクトマネージャーを担当、業務現場の移動を快適にすることが目標。


    ここちよさを感じるのは?
    美味しいごはんを食べているとき​。​

  • 飯野 麻衣

    2016年に入社し、営業本部 直轄部門にて日本に拠点のある欧米カーメーカーへの営業や新規商材推進に従事。​現在は配送業務効率化を支援するサービスのUXデザインを担当。
    顕在化した課題解決だけでなく、ユーザーの想いを実現する体験設計が目標。​


    ここちよさを感じるのは?
    あたたかいお風呂に入っているとき。​

  • 中村 英史

    2025年に入社し、新事業推進室にてサービス事業のマーケティングに従事。現在は業務用カーナビアプリ「Gorillada PRO」のマーケティングを担当。移動のハードルを下げ、業務や体験に集中できる社会の実現に貢献することが目標。


    ここちよさを感じるのは?
    友達とお酒を飲みながら、あれこれ話す時間。