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30年超の技術蓄積でコネクテッドカーの安全・安心に貢献
自動運転技術の革新的な発展や、デジタル化の進展、コネクテッドカーと呼ばれるネットワークに接続する車両の増加などに伴い、自動車を狙ったサイバー攻撃のリスクは年々高まっています。パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社は、パナソニックが家電で長年培ったセキュリティー技術を車の領域に展開。日米欧トップレベルの技術力で、サイバー攻撃から車両を防御・監視・対応。グローバルのお客様に貢献します。
始まりはDVD、B-CAS、携帯電話、スマートフォン・・・
パナソニックにおける自動車セキュリティー技術開発のルーツは、1996年に発売されたDVDプレーヤーにさかのぼります。DVDディスクの不正コピーを許さないコンテンツプロテクション技術は、良質なコンテンツの健全な流通に不可欠なセキュリティー技術。パナソニックは、このDVDを始め、デジタル放送のB-CAS、携帯電話、スマートフォンなど、デジタル家電やICTに不可欠なセキュリティー技術を、業界のトップランナーとして開発してきました。
自動車セキュリティー技術の研究開発が始まったのは2014年。コネクテッドカーの普及を視野に、車の安心・安全に貢献すべく、パナソニックは長年かけて蓄積した人材や技術のリソースを投じることにしたのです。そして、現在では、パナソニックさまざまな商品を対象としたセキュリティー技術が、パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社に結集しています。
パナソニック オートモーティブの自動車セキュリティー技術には、3つの強みがあります。
特許調査大手の株式会社パテント・リザルトが、自動車セキュリティーに関する日本特許1,528件、米国特許3,511件、欧州特許1,141件を、同社の特許分析ツール「Biz Cruncher」を用いて評価を行った結果、特許の質と量の両方で、パナソニックが他社を大きくリードしている状況が明らかになりました。詳細は こちら。
世界最先端のセキュリティー技術に取り組む若手社員
車載システム・部品のセキュリティー
パナソニックはIVI※を中心とした車載システム・車載部品の世界的サプライヤーです。田邉さんは、各製品の開発担当者と連携し、製品のソフトウエアが書き換えられて悪用されない為の技術を開発しています。
- IVI…In-Vehicle(車載)Infotainment(インフォテインメント)の略。情報(インフォメーション)+娯楽(エンターテインメント)」を意味する造語。
「2000年代の終わり、ある車がハッカーに乗っ取られ、自動車セキュリティーへの社会の注目が一気に高まりました。当社でも、製品開発に携わる技術者のマインドチェンジが必要でした」と田邉さんは振り返ります。製品開発に携わる現場社員の一人ひとりがセキュリティー対応の重要性を認識し、実践しなければ、製品のセキュリティーは実現できません。そして、セキュリティー対応は製品の大きな優位性となります。
「一つの開発が終わっても、例えば、出荷済みの製品で使用するOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)などには脆弱性が頻繁に報告されるため、私たちのフォローは続きます。どんどん増える新しい車両向けの開発プロジェクトに参画する一方、過去の経緯が分からないと対策が難しく、開発完了したプロジェクトへの対応を他の人に引き継ぐことは簡単ではありません」と田邉さん。真似ができない高い技術力があるからこその悩みです。
家電のセキュリティー
岩野さんは、幅広い製品群で培ったノウハウを、自動車の領域にも展開するとともに、自動車の領域で得られた知見を家電にフィードバックする相乗効果で、全体の技術レベルを向上させています。
「自分が携わった商品が発売されるとすごくやりがいを感じます」と、岩野さん。「カーメーカー様向けと同じで、商品開発を担う技術者自身に、セキュリティー対策が不可欠であることを理解してもらうことが重要です」。家電においてもハッキングのリスクは課題となっています。岩野さんは、「事故が起きない限り、セキュリティーの脅威を身近に思えないのは当然です。だからこそ、見える化が重要で、パソコンのウイルス対策ソフトのように、家電や車のセキュリティー対策が当たり前になることが、人々が安心して暮らせる社会には必要です」と、指摘します。
セキュリティー対応製品の開発効率化
サイバー攻撃のリスクを特定し、対策方法を自動的に導き出す開発効率化も進んでいます。専門家の暗黙知をプログラム化したことによって、製品の開発者は質問票に回答するだけで脅威分析ができるようになりました。従来比で所要時間が五分の一以上に激減され、数億円の費用を削減するなど、大きな効果を上げています。
青島さんは、「制作したプログラムの一行一行に込めた意味を理解していることで、短期間で要修正の課題を解決できる場合があります。そんな時は、目に見えないメタ的な、例えばプログラムの背景などが自分の中にあることを実感でき、得も言われぬ達成感があります」と説明します。そして、「近い将来、自ら開発した脅威分析システムをクラウドに移行し、全社に展開することで、さらなる効率化を進めたいです」と、これからの目標を語ります。
富家さんはこの10月から職場に配属された新入社員。大学ではセキュリティー技術を専攻し、自ら希望してこの仕事に取り組みます。「職場は、若い先輩たちが自由闊達に活躍する印象を持ちました。会議では、役職に関係なく、一人ひとりに自分の意見を求められます。新人であることに甘えず、私も自分の意見をしっかりと持って取り組みます」と抱負を話します。
次世代監視・検知システム
自動運転時代を見据えて開発された監視・検知システムSIEM(シーム、Security Information and Event Management)は、パナソニックが運営するセキュリティー・オペレーション・センターに組み込まれ、車両から受信した大量の検知ログデータから、サイバー攻撃を特定する役割を担います。
特定したサイバー攻撃の解析結果は、カーメーカーに報告されると、カーメーカーがソフトウエアを更新し、ドライバーの車両を安全な状態に戻します。
「車両SIEMの開発は、世界的にもまだ新しい分野です。私は要件定義から開発、テストまでを一貫して担当しています。大変なことも多いですが、とてもやりがいがあります」と、伊藤さんは説明します。日々進化するサイバー攻撃に立ち向かうためには、最新動向の把握が不可欠です。世界の攻撃事例や対策事例のデータを蓄積し、具体的な対策を検討し実行します。
大学でAIを専攻した伊藤さんは、「セキュリティーにAI技術を応用して作業を自動化し、人が頭を使ってやるべきことに、もっとリソースを集中させたいです」と、抱負を語ります。
統合ECU向けセキュリティー
仮想通信の悪用など新しい脅威にも対応すべく、仮想化プラットフォームにセキュリティー監視機能を統合することで、開発コストを抑えつつ、柔軟で堅牢な環境の構築を目指しています。
統合ECU、つまり、一つのECU(車載コンピューター、Electronic Control Unit)に複数の機能を搭載すると、さまざまなメリットが得られる一方、セキュリティー上のリスクは高まります。例えば、常に外部ネットワークと接する通信機能と、自動運転などの機能を担うADASが、一つのECUに統合されると、外部アクセスによるセキュリティー上のリスクが高まるのです。
平野さんは、ドイツに拠点を置く傘下のグループ会社、オープンシナジー社と連携して、このテーマに取り組んでいます。「システムの構成を深く理解し、俯瞰的に見て、どの対策やアプローチが最適なのかを判断することが求められます。知識の幅広さが求められ、知識のアップデートが常に求められる仕事です」と語ります。
米国での国際学会で論文発表を行うなど、グローバルに活躍する平野さんですが、初めての海外勤務でドイツに赴任した当初は、苦労の連続だったと言います。「日本語でも説明が難しい技術の内容を、英語で現地のエンジニアに説明して、わかってもらえず、また説明して・・・何度も繰り返しました」と振り返ります。3年の勤務を終え、現地で学んだ技術やさまざまなノウハウを生かし、今は横浜オフィスで統合ECU向けセキュリティー対策の指揮を執ります。
ベテランから若手へ。業界屈指の技術者集団が自動車の未来を守る
2021年1月、自動車のサイバーセキュリティー法規が日本で制定され、2022年7月には車両への規制が始まりました。同様の動きは、北米、欧州、中国など、グローバルで広がり、世界のカーメーカーとサプライヤーに、早急な対応が求められています。
こうした世界の変化に応え、パナソニック オートモーティブは、自動車セキュリティーのレベル底上げとともに、技術力と特許力を生かしたセキュリティー対応ツールやシステムの開発にも取り組み、自動車業界のさらなる発展に貢献します。30年以上に亘って蓄積した技術とノウハウは、ベテラン技術者から若手技術者に引き継がれ、業界屈指のセキュリティー技術集団に成長。これからもドライバーの安全・安心に貢献します。